暁 〜小説投稿サイト〜
大淀パソコンスクール
食事の予定は……

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景』だと認識しはじめたことだ。どこのパソコン教室に、全身太陽マークの鎧兜に身を包んだインストラクターなぞいるのだろうか……しかもそのインストラクター、帰るときはもちろん、授業中や事務作業中など、時を選ばず前転して『どちゃりどちゃり』と盛大な音を立てる。どこにそんなインストラクターがいるというのか。

「俺も、この教室に染まったのかなぁ……」

 ポツリと言葉が漏れる。来た当初は、この教室の異質さに戸惑い、突っ込みを入れる日々だったのに……この非日常に、俺の頭は慣れてしまったというのか……。

「いいことなんじゃないですか? 剛に入りては剛に従えといいますし」
「とはいえ、貴重なツッコミ役が……」
「ツッコミ役?」
「あ、いやなんでもないです」

 いかんいかん。大淀さんは、この教室の教室長だ。余計なことを言うのはダメだ……。

「それはそうとカシワギさん」
「はい?」
「今日は川内さんとご飯食べに行くと伺いましたが……?」
「はい。この前の看病のお礼も兼ねて。仲も悪いわけではないし、たまにはいいだろうと思いましてね」

 その発端も、元をたどればあなたなんですけどね。大淀さん。あなたが川内に俺の家の住所を教えるという暴挙を働いたことは、忘れません。それで助かったのは事実ですけれど。

「生徒さんも川内さん一人ですし……本人が希望すれば、今日の授業は早めに終わらせていただいて結構ですから」
「わかりました。ありがとうございます」

 という、粋なのかどうかよく分からない計らいを大淀さんは見せてくれた。しかし……うーん……神通さんはまだしも、なぜ大淀さんまでも今回のやせ……川内との飯の話を知っているのか。大淀さんには話してないはずだけど……?

「共通の友人に、スキャンダル大好きな芸能レポーターみたいな人が一人、いますから。恐縮です」
「はぁ」

 大淀さんは『今晩は二人で食事、楽しんでくださいね』と意味深にほくそ笑み、教室を後にした。その意味深な笑みが何を意味するのか、俺はあえて何も考えないようにする。時刻は午後7時5分前。……そろそろヤツがやってくる頃だが……

 入り口のドアノブがカチャリと静かに回った。

「……あれ」

 時間は問題ないから、きっと川内で間違いないはずなのだが……なんか、拍子抜けするぐらいに静かだ。ドアが静かに開いた。そのドアの向こうにいたのは……

「やっ。せんせー。こんばんはー」

 やっぱり川内だ。相変わらずの真っ赤なパーカーはよく似合うのだが……今日の川内は、なんだかいつもと違う気がした。

「? どうしたの?」
「いや……なんか今日のお前、覇気がないな」
「? そかな?」
「ん」

 そう。いつもと比べて、今日の川内は勢いがない。いつもな
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