暁 〜小説投稿サイト〜
大淀パソコンスクール
色々な意味で予兆

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に……。この後用事があると言っていた割りには、別段急ぐ風でもなく、むしろだらだらと帰り支度をしている川内の後ろ姿に、俺は違和感を覚えたが……

「んじゃカシワギせんせ、お大事に」
「おー……お前も……用事がんばれー」
「んー。ちゃんと病院行くんだよ?」
「おー……」
「だめだこりゃ……」

 と、最後はチェックのマフラーを首に巻きつつダメ出しをされたことで、俺の意識は怒りにふりきれた。とはいえ怒る気力もなく、俺はヘラヘラと笑いながら、川内の後ろ姿を見送ることしか出来なかった。

 さて、川内が返った後も、クローズ業務がすべて終わるまでは帰ることが出来ない。一応大淀さんには、『川内が一時間早く帰ったので、早くクローズします』とメールを送信し、承諾を得ている。あとはクローズ業務をして終わりなのだが……

「……あれ。んー……」

 中々に川内の備考欄への記入が終わらない。かなり気合を入れて記入したつもりなのだが……『進行度は上々。この調子で行けばWordのカリキュラム終了は早くなる』と打ち込んだつもりが、『進行度はじをえじょえ。こりとょうしですけばてらすしの……』と、三度ケッタイな魔法スペルの詠唱と化していた。俺の両手は新手のモンスターか何かでも召喚したいのか……手が言うことを聞かん。

「これは……そろそろヤバいかもしれん」

 タイピングがずれる……つまり、人差し指がホームポジションに気付いてないってことだ。ホームポジションがズレるほど、俺の体力は今、くたばっているのか。

「んー……まずいな……」

 クローズ業務が終わり、帰り支度を整えて事務所の電気を消す。途端に真っ暗になった室内に、俺の咳が響き渡る。段々頭がフラフラしてきた。

「風邪か……? まぁ大丈夫だろう」

 これぐらいの体調不良なら、何度でも乗り越えてきたわッ! あの地獄のブラック企業でな……!! 俺は頭をふらつかせながら自分の身体を蛇行運転し、家路を急いだ。

「んー……うおっ……えぐしっ!?」

 途中、川沿いの道を歩いて帰宅するのだが、100メートルほどの道のりで、3回ほど川に転落しかけた。頭のフラフラが収まらない。道が二重に見えてきた。……俺、ちゃんと家に帰れるのかなぁ……。
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