暁 〜小説投稿サイト〜
大淀パソコンスクール
二人は順調

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 その後は特に何事もなく授業は終了。Excelの中では比較的難易度の高いグラフ作成だったが、ソラール先輩の暖かい指導の元、神通さんは何かコツを掴んだらしい。練習で作成したグラフは、ことごとく綺麗に仕上げた後、タムラさんたちと共に談笑しながら教室を後にした。

 やがて日没を向かえ、ソラール先輩は『太陽……俺の太陽よぅ……』などとぶつぶつ呟きながら、うつろな眼差しで(兜で見えなかったけど、多分そんな目だったと思う)帰って行った。今事務所には、川内を待つ俺と大淀さんの二人だけだ。

 川内がやってくるのを戦々恐々で待ちながら、俺は今日の授業の進捗をAccessで記録していった。

「インデントの調整方法を確認。留意点は特に無し……と」

 フと気になって、神通さんの備考欄を覗いてみる。神通さんは、俺にとっての川内と同じで、ソラール先輩が専任のようになっている。ゆえに神通さんのデータは、ソラール先輩しか書き込んでないのだが……

――気分的には太陽メダルを5枚ぐらいあげたいところ。
  制約の決まり故に一枚しか進呈出来ないのがもどかしい。
  太陽は愛情に満ち溢れているが……それを許してはくれないだろうか。

 相変わらず意味不明だ。進捗はちゃんと書いているから問題ないのだが……先輩なりの賛美の仕方なんだろうなぁ。頭の中のはてなマークは消えないけれど。

「カシワギさん」
「はい」

 唐突に大淀さんに声をかけられ、俺は慌てて神通さんのウィンドウを閉じる。別にやましいことをしているわけではないのだが、いきなり声をかけられると、不思議と今開いているウィンドウは閉じなければならない衝動にかられる。

「業務基幹ソフトの進捗はどうですか?」
「ああ、ただいま勉強中ですが……おれはAccessは持ってないので、どうしてもここでの開発がメインになります。そうなると、中々進まないですね」
「なるほど」

 俺の言葉を受けた大淀さんは、マウスをカチカチといじり始めた。今俺と大淀さんはさし向かいの状態だから、彼女がパソコンで何をやっているのか見えない。

「……あ」

 パソコンの画面をジッと見つめる大淀さんが、小さく声を上げた。何を見つけたんだろう……なんか不安になるな……。

「カシワギさん、2013でいいなら、ライセンスが一つ余ってるみたいです」
「そうなんですか?」
「勉強用のパソコンにインストールしますんで、今度持ってきてもらっていいですか?」

 それは助かる……そうすれば家で勉強もできるし、開発の進捗も劇的に上がるぞ……!!

「わかりました。じゃあ明日にでも持ってきます」
「はい。お願いします、これでAccessの勉強も出来ますし、開発も出来ると思います」
「ですね。ありがとうございます
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