暁 〜小説投稿サイト〜
大淀パソコンスクール
何でも太陽と夜戦で片付けようとするのはやめろ

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う質問が、身体が耄碌して常にぷるぷると震えているコウサカさんから飛んできた時、

「ずりずりと選択したあと、右クリックしましょう。そしたら『コピー』って項目がありますから」

 と回答したのだが……このことは後ほどソラール先輩に注意された。なんでも、超初心者にとっては『右クリック』という操作の存在は、混乱の元になるそうだ。よく分からない状況で右クリックの存在を知ってしまうと、左クリックと右クリックの使い分けが出来ず、混乱してしまうらしい。

「今回の生徒はご老体ゆえ、なおさらだ」
「そんなもんなんすか……」

 うーん……普通なら右と左のクリックの使い分けって簡単にできると思うんだけど……それは、俺が小さい頃からマウス操作に慣れ親しんでるからなのか?

「貴公にもあったはずだ。まだ冒険をはじめたばかりで右も左も分からず、強大な敵……そう、牛頭デーモンと相対する時、手元にある黄金松脂と炭松脂、どちらを利用すれば効果的に敵にダメージを与えることが出来るのかわからなかった時が」
「この前も言いましたけど、喩え話が婉曲どころか意味不明です」
「それが生徒だ。確かに右クリックは便利な操作だが、ここの生徒たちにはデメリットの方が多い。故に貴公も、右クリックでなければ解決できない場合以外は、できるだけ左クリックだけで問題を解決してくれ」
「まぁはじめて牛頭デーモンと戦う時は、炭松脂なんか持ってないけどな。ハッハッハッ」
「人の話には真摯に耳を傾けて下さいソラール先輩」


 相変わらず婉曲的で、今一例え話になってないような例え話をするなぁこの人は。黄金松脂ってなんだ?  牛頭デーモンってなんだよ訳が分からん……。

 ただ、これもまた貴重な情報だ。やはりここの生徒さん……いやこのおじいちゃんおばあちゃんたちは、こちらが想像している以上にパソコン操作に慣れてないということか。こちらとしては自然で簡単な操作であっても、人が変われば難易度も変わる……シャットダウンの話を聞いた時のことを俺は忘れていた。コレは確かに、指摘されないとわからないことだ。

「分かりました。ご指摘ありがとうございます」
「これで貴公も、太陽の戦士にまた一歩近づいたな」
「いや太陽の戦士てよくわかりませんから」
「その調子で研鑽を積めば、いずれ『太陽の光の槍』を賜る日も……」
「賜るつもりはないですし、そんな物騒なものを一体誰からもらえと言うんですか」
「貴公……」

 そうして、昼の授業が終わりを告げる。太陽が出てないと戦えぬという、これまたツッコミ待ちとしか思えない理由で帰宅したソラール先輩を除く、俺と大淀さんがその場に残る。あとは夜の授業……決して夜戦ではない……の生徒である川内の授業を残すのみとなった。
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