暁 〜小説投稿サイト〜
大淀パソコンスクール
先輩は変な奴 担当生徒も変な奴

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イの白のフレームが少々黄ばんではいるが、性能的には問題はないようで安心だ。俺は大淀さんの向かいの席に座り、持ってきたかばんを足元に置いて、着てきた上着を椅子にかけた。

「大淀さん、授業はまだ終わらないんですよね」
「はい」
「少し授業の様子を覗いていいですか?」

 パソコン教室の授業というものを、俺は見たことがない。実際に自分が行う前に、出来れば一度、本番がどういうものなのかを確認しておきたいわけだが……

「いいですよ? 今なら生徒さんも二人だけですから、席も空いてますし」
「ありがとうございます」

 よし。これで授業を体験することが出来る。時計を見る。授業終了まであと30分。その間に、授業の様子をしっかりと目に焼き付けておこう。俺はかばんの中から白紙の紙を数枚はさんだ愛用のバインダーを取り出し、それを手に、授業中の教室に入った。

 教室の中には、デスクトップのPCが準備されている席が8席あり、向かい合った4席ずつの島になっている。生徒と思しきおじいちゃんたちは1つの島に斜め向かいに座っていて、実に朗らかな笑顔でパソコンを操作していた。

「お、新しい生徒さんかな?」
「よろしく〜」
「失礼しま……!?」

 ……正直に言う。確かに俺は、授業の様子を目に焼き付けるつもりだったが……わざわざ俺自身が意識して焼き付けなくても、その光景はイヤでも網膜にこびりついた。

「ぉお、貴公が……!」

 それはなぜか。笑顔が素敵なおじいちゃん二人と共にこの教室にいたのが、全身に太陽のイラストを散りばめた、西洋の騎士のコスプレ野郎だったからだ。

「大淀から話は聞いている。ようこそ『大淀パソコンスクール』へ!」

 バケツみたいな兜をかぶっているせいで、そのコスプレ野郎の表情は見えないが、そいつは朗らかな声で俺のことを歓迎してきやがった。そしてそのまま俺を教室に招き入れ、一人のおじいちゃんの向かいの席に俺を案内する。一つの島の4つの席のうち、3つが埋まった。

「ああ、貴公もどうやら、亡者ではないようだ」

 俺が席に座るなり、そのコスプレ野郎はこんな意味不明なことを口にしやがった。亡者って何だよ意味がさっぱりわからない。

 そもそも仕事中だというのに、なんだその意味不明なコスプレは。いや服装だけならまだ分かる。分かりたくないが理解はする。だが、なぜ仕事中に剣だの丸い盾だの持っているんだ。しかも盾全体には、上手いともヘタとも形容出来ない不可思議な表情をした、擬人化した太陽のイラストが描いてある。その太陽のアンニュイな表情はなんだ。頭のてっぺんからつま先まで、疑問しか見つからない。

 そのコスプレ野郎が、右手で持っていた剣を鞘にしまい、何とも形容出来ない妙な歩き方で近づいてきて、俺の席のパソコ
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