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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第四十七話 敗戦の余波
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だけではないな、私はあの男をもっと良く知りたいのだと思う。イゼルローンで会ったが不思議な男だった、一体あれはどういう男なのか……」

この男がキルヒアイスを殺した、そう思ったが実感が湧かなかった。俺が勝った、それも思えなかった……。後に残ったのはあの男に対する恐怖だけだった……。そして時が経つにつれてその想いは強くなる。

「……因縁ですな、二人とも未だ階級は低い。しかし帝国を、反乱軍を動かす人間になっている。戦うのは必然ということですか……」
クレメンツが首を振りつつ呟くように吐いた。妙な事を言うと思った。帝国を動かす?

「それはどういう意味かな、准将」
リューネブルクが訝しげにクレメンツに問いかけた。
「今回、クラーゼン元帥が宇宙艦隊司令長官になったのは、元はと言えばミューゼル少将とヴァレンシュタインが原因なのですよ」

思わずクレメンツの顔をまじまじと見た。嘘を吐いている様子は無い、リューネブルクの顔を見た。彼も困惑を顔に浮かべている。そんな俺達をクレメンツが黙って見ている。

「よく分からない、分かるように教えてくれないか、准将」
俺の問いかけにクレメンツはコーヒーを一口飲んでから答えた。
「今回、クラーゼン元帥が宇宙艦隊司令長官になったのは自らそれを望んだからですが、そこにはクラーゼン元帥を焚き付ける人物が居たからです」

意外な話だ。リューネブルクも不思議そうな顔をしている。
「それは?」
「シュターデン少将です」
「シュターデン……、宇宙艦隊総司令部の作戦参謀だが、それが?」
問いかけるとクレメンツは無言で頷いた。

どういう事だ? クラーゼンの宇宙艦隊司令長官就任には俺が関係しているとクレメンツは言っている。そしてシュターデンがクラーゼンを焚き付けた……、だが俺には両者とも接点は無い。何故俺に繋がる? 俺達が困惑しているのがおかしかったのか、クレメンツは微かに苦笑を浮かべている。

「シュターデン少将はお二人を恨んでいるのですよ、そしてヴァレンシュタインの事も……」
「……」

またクレメンツが妙なことを言った。ヴァレンシュタインは敵だから分からないでもない。だが何故俺とリューネブルクがシュターデンに恨まれるのか……。彼とは特に因縁らしきものは無い。リューネブルクも困惑している、つまり彼も心当たりがないという事だろう。

シュターデン少将、不機嫌そうな表情をした男だ。眼の前のクレメンツとは違い癖の有りそうな男に見える。主として参謀として軍歴を重ねてきている。戦場を共にする事は有っても共に戦ったという意識は無い。恨みを買う? 今一つピンとこない。

「彼はヴァンフリートで帝国軍が反乱軍に敗れたのはお二人の所為だと思っているのです」
「……」
リューネブルクを見た、憮然として
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