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九点差逆転
第三章

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「いいな」
「望むところよ、帰ったら晩御飯の時に勝ち誇ってあげるわ」
「それは僕の台詞だ」
「私のよ」
「全く、シーズン中はいつもこうだな」
「本当にね」
 両親は言い合う子供達を見てやれやれとした顔で言った。
「野球野球で」
「言い合ってばかりだな」
「二人共どれだけ野球好きなのよ」
「幾ら何でも過ぎるな」
「阪神が好きなんだよ」
「カープが好きなの」 
 二人は両親に顔を向けて言い返した。
「私は心も真っ赤だから」
「僕の身体には黒と黄色の阪神液が流れてるんだよ」
「カープこそが生きがいよ」
「阪神なくして何の人生なんだよ」
「野球は日本ハムだろ」
「ロッテでしょ」 
 両親は憮然として二人に返した。
「巨人は絶対に駄目にしても」
「パリーグも見ろよ」
「いや、そっちは興味ないから」
「リーグ違うから」
 二人は両親にまた返した。
「嫌いじゃないけれど」
「シリーズ以外ではね」
「別にいいよ」
「二リーグ制賛成だけれどね」
「そうか、まあ巨人じゃないからな」
「別にいいけれどね」
 両親は子供達が巨人を応援するのなら止めるつもりだった、おぞましい邪悪の信者になることはだ。
「しかし本当に好きだな」
「生きがいになってるのは確かね」 
 両親も呆れるしかなかった、そして二人はこの日早い昼食を食べてだった。甲子園に向かった。
 そして甲子園でだ、二人はそれぞれの球場の場所で陣取ってそれぞれのチームの応援をはじめたが。
 広島は阪神を果敢に攻めた、気付けばだった。
「よっし、九点差!」
「今日は勝ったのう」
「阪神さんには悪いがな」
「今日はもろうたわ」
「はい、いけますね」
 周りの同志達にだ、千佳はカープの八番のユニフォームとカープ帽の姿で満面の笑顔で応えた。
「今日は」
「ああ、嬢ちゃんも相変わらずやのう」
「今日もカープ応援してるな」
「それも熱く」
「はい、あっちにお兄ちゃんいてますけど」
 一塁側の方を指差して笑って言った。
「今日は勝ったって言えます」
「ああ、言うたれ言うたれ」
「これがカープじゃってな」
「伊達に去年優勝しとらんわ」
「覇者の力見せたるけんのう」
 広島から来た彼等は笑っていた、そのうえで応援していたが。
 対する一塁側、もっと言えば甲子園の殆どの面々は試合の状況に苦い顔になってしまっていた。
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