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その日はいつかやって来る
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 その日はいつかやって来る

 あの男は瞬く間に成長した。 名も知らぬ雑草が、図太く逞しく育って行くように。
 そしてほんの少し目を瞑っている間に、元は幽霊だった娘や、貧乏神が憑いていた娘は、すぐに幽霊に戻った。 もう名前も覚えていない。
 我々を何度か救ったミカミと言う女もすぐに消えた。 流星のように一瞬だけ輝いて、美しい火花を散らして消えて行った。
 それから暫くして、バンパイアと人のハーフだとか言った男もいなくなった。
 カオスと言う魔人も灰になった、魔族の血でも入っていたのだろうか? しかし永遠では無かった。

 神族達も人間との火遊びなど許されていなかったのだろう、配置転換で千年と経たずどこかに行った。 もちろん神族と個人的に連絡を取るような愚かな真似はしていない。
 こうして奴の心も次第に乾いて、我々に近い存在になって行った。
 魔界の多くの者も奴を暖かく迎えた、血みどろの肉弾戦、陰惨な謀略戦、最高に手厚いもてなしを受けて、戦って、戦って、戦い抜いて、奴はアシュタロスの後釜に座った。

 彼の正室として迎えられた私は、文珠を使える魔族の子を多く産んで賞賛された。 神族からの抗議? そんな物はゴミ箱に捨てた、私の可愛い子供達を制限する事など許さない、代わりに奴らを少し削減してやった。

 記念日にはプレゼント、共に眠る時には愛の言葉。 あの人は何を伝えたかったのだろう? 欲しければ力で奪えばいい、優しい言葉も贈り物も必要無い、私はどんどん堕落して行った。

 愛された私の羽には白い物が混じるようになっていた。 あの人は「もったい無いから抜くな」と言ったが、周りの者に示しがつかない。 抜いた羽はあの人に渡したが、ビンに詰めて保存していた、恥ずかしい……
 白黒の羽を見て「牛みたいだ」と言われた。 「ホルスタイン」とも言われた。 意味が分からなかった私は、それを侮辱と受け止めた。 でも、あの時は殴らなければ良かった。
 そんな幸福な時がいつまでも続くかに思えた。 しかし、それも永遠ではなかった……

「いやだああああっ!! 目をっ、目を開けてくれえっ! お前がいなくなったら私はどうすればいいっ! この子達はどうすればいいんだああっ!!」

 それはもちろん、保身のためや、今の地位に居座りたいと思って出た言葉ではない。 子供は孫を産み、孫は曾孫を産む程の時が流れていた。 子供達も力強く、誰からも害される事は無いだろう。
 しかし、あの人の体から抜け出して、私達から永遠を奪い、あまつさえ一身に寵愛を受けた娘。 ルシオラと名付けられた娘だけは、どうしても許せなかった。

 程無く後継者争いの抗争が起こった。 無様な姿を衆目に晒し、白い羽の引き取り手が無くなった私は求心力を失っていたためだ。
 葬儀もままなら
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