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ドリトル先生と悩める画家
第三幕その五

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「余計にね」
「なりたくないね、スランプには」
「そうだよね」
「そんなに苦しいんだったら」
「抜け出られないものだったら」
 皆もこう考えるとです、辛いものがありました。
「そんなのだったらね」
「嫌になるわね」
「逃げたくても逃げられない」
「苦しくて仕方ないわ」
「そうだよ、その苦しみはね」
 先生も聞いた限りではです。
「これ以上のものはないっていうよ」
「芸術の道も大変ね」
「そんな苦しいこともあるなんて」
「絵を描くのも大変なのね」
「どうしても」
「あの人もそうなのかもね」 
 先生は今も必死に描きながら苦しいお顔をしている画家さんを見ました、本当に苦しいお顔のままです。
「スランプと戦っている」
「苦労して」
「そのうえでだね」
「何とかしようってしているの」
「自分自身で」
「スランプの一番怖いところはね」
 先生が知っている限りではです。
「自分でしかなんだ」
「抜け出ることは出来ない」
「そうしたものだからだね」
「一番怖いんだ、そのことが」
「自分でするしかないから」
「そう、自分でね」
 何としてもというのだ。
「原因があれば自分で見付けて」
「自分で解決する」
「そうするしかないんだ」
「結局のところは」
「そうしないと」
「そう、本当にね」 
 先生はこう言ってでした、画家さんを見ていました。動物の皆と一緒に。そしてそのうえでまたお散歩をするのでした。
 先生は学問を続けました、論文を書いて。そうしてこの日は過ごしました。ただ画家さんのことは頭の片隅にありました。
 そうして次の日でした、今度は大学に登校するとでした。
 その画家さんが朝のキャンバスにいて描いていました、やっぱり苦しいお顔です。
「あれっ、まただね」
「あの画家さんとお会いしたね」
「会ったていうか見かけたっていうか」
「そうなるかしら」
「うん、今日は朝からなんだね」
 先生もその画家さんを見て言いました。
「苦しいお顔をして描いてるね」
「やっぱり絵の具を沢山使ってね」
「絵を描いてるね」
「もう絵と格闘する感じで」
「そうしてるね」
「そうだね、時間があるし」
 先生はこの日は朝早いうちに来ました、まだ七時です。朝靄が残っています。講義はありますが九時からです。
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