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とある世界の物質破壊≪ディストラクション≫
Extra edition
忘れられない誕生日
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だったら良かったのに……。」

「え?」

「……あ。」

──僕……今なんて言った……?

まさか……口に出してた……?

急いで美琴に弁解しようと、話しかけた。

「い、今のはその違うよ…!その…!」

これは絶対に言ってはいけなかった。

今の美琴は自分を兄だと思っている。

──そんな兄からあんなことを言われたら間違いなく怒るはず……。

そう思っていた。

だが、美琴は全く違うことを言ってきた。

怒るのではなく、問い詰めることでもなく、母さんに聞きに行くわけでもなく、ただ。

「お兄ちゃんと美琴は兄妹だよ?だって……」

美琴は間を置いてから、ゆっくりと話した。

「ママに聞いたらね教えてくれたの、美琴って名前の漢字には"琴"っていう楽器の漢字が入ってて、お兄ちゃんの名前は湊だから"奏"っていう字が入ってるでしょ?だから、"琴を奏でる"で兄妹だよ!」

僕はポカーンとしてしまった。

偶然なのに、当たり前じゃないのに、そういう意味でこの名前が付けられたわけでもない。

それでも、自分が美琴の兄であるという証を美琴なりに考えてくれた。

ただ、それだけなのに嬉しかった。

血が繋がっていない事を美琴が思い出したら、きっと自分に怒るだろう。

自分と一緒にいたら、必ず危ない目にもあう。

それでも、その一言で僕は改めて約束した。

──これからも何があっても君を守る。

自分の命と引き換えにしても、この世界を引き換えにしても君だけは必ず……

守ってみせる。

美琴が9歳になったこの日、この日だけは僕は絶対に忘れない。
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