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五人娘
第四章
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 家にいるのは使用人達は別にしてだ、董勝と妻それに董明の三人だけだった。董明の婚姻も近いがだ。
 しかしだ、董勝は三人だけになった食卓で寂しそうに言った。
「三人だけか」
「そうなったわね」
「そうだね」
 妻と息子も応えた。
「気付いたらね」
「私達だけになったわね」
「五人どんどん嫁いでな」
 可愛がっていた娘達がというのだ。
「そしてな」
「もうね」
「わし等三人だけか」
「何かね」 
 ここでだ、こんなことを言った妻だった。
「あれね、娘が出来てもね」
「嫁いで行ってな」
「家からいなくなるのね」
「そうしたものだな」
「私も」
 妻、花鏡も言った。見れば娘達の顔は全てこの母と似ている。それぞれの顔立ちがあるにしてもである。
「そうだったのね」
「ああ、御前もな」
「やっぱりね」
「娘はだな」
「家から出て行くものなのよ」
 嫁いでというのだ。
「それは李さんもよね」
「あちらもだな」
「だって明に嫁ぐのよ」
 この家の跡取り息子である彼にというのだ。
「だからね」
「あちらも一緒か」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「こちらは五人、あちらは一人」
「そこは違うな」
「ええ、全然ね」
 このことはだ、妻は寂しく言った。
「寂しさがね」
「五人と一人じゃな」
「やっぱり違うわ」
「そうだな、こちらに来てくれるにしても」
「五人皆嫁いで」
「寂しいな」
「そうだね、本当にね」
 董明も寂しそうに言った。
「五人もいたのにね」
「一人ずつな」
「嫁いで」
「寂しくなった、あちらは賑やかになったか」
「そうだろうね」
「五人共行ってな」
「娘は嫁いで息子は迎えるかな」
 董明はこうも言った。
「そうなるかな」
「そうだ、御前も子供が出来たらわかる」
 董勝は我が子に言った。
「そのことがな」
「そうなんだね」
「それがわかりたいならだ」
「結婚してだね」
「子供をもうけろ、いいな」
「わかったよ」
「会いたくなったらあちらに行くか」
 董勝は娘達のことを思い遠い目になって言った。
「そうするか」
「暇があれば」
「そうするか、元気なあいつ等の顔も見るか」
「それも親の楽しみなんだね」
「そうだ、嫁いだ先での笑顔を見ることもな」
 状況は聞いている、五人であちらの家で嫁として嫁ぎ先の家の者達とも実に仲良くやっているという。そして芙蓉のお腹が大きくなってきているともいう。
「そして孫が出来ればな」
「余計にだね」
「それが楽しみなのだろうな」
「じゃあ僕も」
「ああ、結婚してな」
「子供をもうけるよ」
 息子も娘もとだ、董明は父に約束した。迎える息子も嫁ぐ娘も。このことを思いつつ彼の結婚のその時を待つのだった。
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