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風魔の小次郎 風魔血風録
91部分:第九話 夜叉の窮地その一
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第九話 夜叉の窮地その一

                 第九話 夜叉の窮地
 小次郎は柳生屋敷の庭で風林火山を手にしていた。相変わらず素振りを続けている。
「あの時は咄嗟に持ったが」
 身体全体で振っていた。そうして言葉を出していた。
「何て重さなんだ。こんなの振り回そうと思ったら」
 握っている両手に血が滲んでいる。それで風林火山の柄の部分が赤く染まっていた。
「かなりのものがいるよな。けれど」
 ここで小次郎の気が引き締まる。
「武蔵も壬生もいる。それに」
 屋敷の方を見る。そのうえで顔を一層引き締めさせる。
「竜魔の兄ちゃんも動けない今は少しでも」
「やれやれだな」
 そんな彼を軒先に座っている風魔の面々が見て呆れた声をあげる。
「何度も何度もよく続ける」
「手なんかボロボロになってるのにな」
「それでも続けるか」
 呆れてはいるが半分認めていた。
「ある意味立派だな」
「全くだ」
「それでだ」
 林彪がふとした感じで声をあげてきた。
「竜魔はどうだ?」
「思わしくないな」
 劉鵬は首を捻ったうえで林彪の問いに答えた。
「あんなに寝込んでいる竜魔を見たのははじめてだ」
「そうか」
「あのままでは命も危ないかもな」
「おい、それはまずいぞ」
 兜丸は今の劉鵬の言葉を聞いてすぐに顔を顰めさせた。
「あいつがいないと風魔自体が」
「そうですよ。竜魔さんは僕達のリーダーですし」
 麗羅も言う。
「その竜魔さんに何かあったら」
「それで今は誰が看病しているんだ?」
 小龍の問いは冷静だった。
「見たところ蘭子さんの姿が見えないが」
「ずっとつきっきりだ」
 霧風が答えた。
「言っても聞かない。もうかなり疲れている筈なのにな」
「そうか」
「このままでは蘭子さんも倒れてしまう」
 劉鵬はこのことを危惧していた。
「どうしたものかな」
「しかし今はどうしようもない」
 霧風は霧風でそう言うしかなかった。
「見ているしかないな」
「そうだな。それでだ」
 劉鵬はここでこの話は一旦打ち切った。そのうえでまた言うのだった。
「今度の試合だな」
「ああ、行って来る」
 霧風が答えた。
「いいな、小龍」
「わかっている」
 霧風に声をかけられ静かに頷くのだった。
「ではな。行くぞ」
「ああ」
「僕達は場内整理ですか」
「そうだな」
 林彪は麗羅の言葉に頷いてみせた。
「じゃあ行くか」
「それで俺と御前で留守番か」
「何か里にいる時と同じだな」 
 少し苦笑いになって兜丸に応える。
「そういえば今は里には項羽と夢魔がいるか」
「そういえば項羽はどうなったのだ」
 霧風がそれを問うた。
「もう傷は癒えていると思うが」
「そうだな、そろ
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