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外伝
外伝《絶剣の弟子》I〜rising hope〜(外伝最終話)
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 木々の間を風が吹き抜けて行く。とは言ってもここはアルン高原であり、森というほど木が鬱蒼と茂っている訳ではない。十数人のプレイヤーで周囲を取り囲める程度の面積しかない。そして、今18人のプレイヤーがそこを囲んでいた。

「…………」

 息を潜めながら索敵スキルの探知を何度もかけ直し、何度も数え直す。数は変わらず18人だ。

「……もうやだ」

 うんざりしたため息を1つ吐き、音を殺しながら背中の剣を抜く。その刀身は鋼ではなく、半透明の結晶を剣の形に加工したような印象だ。実際にはリズベットさんが通常の鍛治の過程を踏んで作ってくれたのだが。
 じりじりと囲いを狭めてくるPKプレイヤーたちは妙に統制が取れている。これは別の場所に指揮官がいると見て間違いない。

「…………」

 まだ見ぬ指揮官を見つけようと、また探知を巡らすが範囲外に居るのか隠蔽のスキルに長けてるのか見つからない。PKプレイヤーに狙われるようになってからは索敵スキルの熟練度を意識して上げているが、未だ付け焼き刃の域は出ていないレベルだ。
 そんなことを考えていると、木々の間を風が通り抜ける環境音の中に異音が混じる。低音で気付きにくいよう工夫されているが、ここまで静かだと低音の呪文詠唱でも分かりやすい。

「…………っ!」

 しゃがんでいた木の枝に足をかけ、体を後ろに倒す。放たれた矢がさっきまでいた場所を通り抜けてどこかの木の幹に刺さる。矢は1本だけでなく、次々と撃ち込まれてくるが、その都度木々を遮蔽物にして凌ぐ。斉射は2分ほど続けられたが、何とか全て避け切った。
 辺りからは苛立ちの声が聞こえ、散発的に矢や魔法の攻撃が飛んで来るが、当てずっぽうが当たるほど腑抜けてはいない。
 PKたちは次に、剣を抜くと数人ずつ木々の中に入って来た。大人数が一度に入れるだけの広さはないので4人ずつの小集団が2つだ。元々ここへ逃げ込んだのはこの状況を作り出す為で、慌てることはない。
 気配を悟られないように、隠蔽スキルで索敵を妨害し、同時に木々を跳び移る足音を消しながら小集団の背後に回る。

(後5歩……3歩、2歩……今!)

 今立っている木の幹に取り付けられた紐を引っ張ると、眼下の小集団の中で最後尾を歩いていたプレイヤーが猛烈なスピードで浮上して来る。

「ガッ……??」

 首筋の後ろが足下の木の枝に強く打ち付けられ息が詰まると共に、突然の事態が吊り上げられたプレイヤーを激しく混乱させる。
 俺は剣を逆手に持つと、プレイヤーが思考を取り戻す前に急所である後頭部を貫いた。
 体がリメインライトに変わっていくのを確認すると、小集団の後方に着地。その気配を悟られる前に最も後方にいるプレイヤーの心臓部分を突き刺した。声も挙げられないまま、そ
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