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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第三十話 救出作戦
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した。ヤン大佐がワイドボーン大佐の肩に手をかけます。大佐がヤン大佐を見ました。ヤン大佐は黙って首を横に振ります。ワイドボーン大佐が悔しげに唇をかむ姿が見えました。

「総司令部は今回の攻略戦で将兵の信頼を失いました。その信頼を取り戻すには総司令部の人間が犠牲になる覚悟を示す必要が有ります。小官は亡命者でもあります。小官が残れば彼らも信じてくれると思います」

道理だと思います、しかし何故大佐がとも思います。皆同じ思いなのでしょう、遣る瀬無い表情をしています。ワイドボーン大佐は顔を顰めヤン大佐は何度も首を振りました。

「閣下、小官はフォーク中佐のようにはなりたくありません。救出作戦の指揮を執らせてください」
ヴァレンシュタイン大佐がグリーンヒル参謀長に訴えました。参謀長は目を閉じて考えています。そして目を開いた時、参謀長の目は真っ赤でした。

「救出作戦の指揮はヴァレンシュタイン大佐が執る」
「閣下!」
掠れた声でした、そしてその掠れたような声にワイドボーン大佐の悲鳴が重なります。ですがグリーンヒル参謀長が命令を覆すことは有りませんでした。

「救出用の艦隊を選抜してくれ……。ヴァレンシュタイン大佐、貴官には苦労をかける……」
「……小官は準備が有りますのでこれで失礼します」

ヴァレンシュタイン大佐が敬礼するとグリーンヒル参謀長が答礼を返しました。参謀長の答礼は心なしか長かったような気がします。踵を返して艦橋を出ようとする大佐の行く手をワイドボーン大佐が塞ぎました。

「ヴァレンシュタイン、答えてくれ。昨日、俺達と話をしなかったのは第二百十四条の所為か……。俺達を巻き込むまいと考えたのか……」
「……」
呻くような声でした。周りも皆俯いています。ヴァレンシュタイン大佐は無表情にワイドボーン大佐を見ていました。

「何故だ、何故俺達に相談しない……」
何かを堪えるような、絞り出すような声です。
「……急ぐんです、そこを退いてください」
ヴァレンシュタイン大佐の声は何の感情も見えない機械的な声でした。

「……お前は何時もそうだ。何故だ、ヴァレンシュタイン……」
ワイドボーン大佐は退こうとしません。そしてヴァレンシュタイン大佐は微かに苛立ちを見せると低く、凄みさえ感じさせる声を出しました。
「そこを退きなさい……。 私は急ぐんです!」

そう言うとヴァレンシュタイン大佐はワイドボーン大佐を押し退け、足早に艦橋を出て行きました。押し退けられた大佐は切なそうにヴァレンシュタイン大佐の出て行った方を見ています。そしてヤン大佐の方を見ました。

「ヤン、お前は気付いていたのか?」
「……ああ、もしかしたらとは思っていた」
「何故言わなかった!」
ワイドボーン大佐が激昂しました。

「言えばどう
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