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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二十九話 第二百十四条
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大佐の言うとおりです。追い込まれた人間がどれだけ危険かは私達自身が今経験したばかりの事です。そしてその後始末のために私達は苦労している……。皆その事を思ったのでしょう、何人かの参謀がやりきれないような表情で誰もいない指揮官席を見ました。

しばらく沈黙が落ちた後、ヴァレンシュタイン大佐が何かを振り払うかのように首を一度横に振りました。そして考えをまとめるような口調で話し始めます。皆が黙ってそれを聞きました。

「要塞内にはまだ二万隻は有るはずです。味方殺しをした後にその二万隻を出撃させる、そして強襲揚陸艦を、ミサイル艇を攻撃する……。味方にそれを防ぐことが出来ますか?」
「……」

皆、何も言いません。黙って視線を逸らすだけです。到底出来る事ではないと思ったのでしょう。その様子を見てヴァレンシュタイン大佐が言葉を続けました。

「もう一度混戦状態を作りだせますか? 味方殺しを目の前で見てその上で混戦状態に持ち込めと言っても味方は二の足を踏むでしょう。なすすべもなく強襲揚陸艦とミサイル艇は撃破される」
「……」

「ヴァレンシュタイン大佐の言うとおりだ。ミュッケンベルガー元帥は追い込まれている。味方殺しをするかもしれない。混戦状態は作り出せない……」
ヤン大佐が顔を顰めて溜息を吐きました。その声に促されるかのように何人かが頷いています。

「要塞内の味方を撤収させる方法は? 何か考えが有るかね?」
グリーンヒル参謀長が問いかけました。
「……百隻程度の小艦隊で目立たないように接岸し収容するしかありません。一度ではむりでしょう、最低でも二度は行う必要が有ります」

彼方此方から溜息が聞こえました。百隻程度の艦隊では敵の攻撃を受ければ一たまりもありません。しかも混戦状態に出来ない以上、味方は牽制程度の攻撃しかできないのです。

敵が収容用の艦隊を攻撃しようとした時は要塞に近づき敵を牽制する。しかし不用意に要塞に近づけば要塞主砲(トール・ハンマー)の一撃を受けます。同盟軍は厳しい状況に追い込まれました。

ヴァレンシュタイン大佐の言葉にヤン大佐が続けました。
「味方の主力艦隊はミュッケンベルガー元帥の注意を、敵艦隊の注意を引く必要が有るな、結構難しい戦術行動を強いられそうだ……。ミサイル艇を他の場所で使用してミュッケンベルガー元帥の注意を逸らすか……」

「簡単じゃないぞ、ヤン」
「だがやらなければならない。そうだろう、ワイドボーン」
ワイドボーン大佐が溜息を吐き、ヤン大佐は頭を掻いています。

「敵艦隊が強襲揚陸艦を攻撃します」
オペレータの声に皆がスクリーンを見ました。スクリーンには敵の攻撃を受け爆発する強襲揚陸艦の姿が映っています。その様子を見ながらヴァレンシュタイン大佐がグリーンヒル参謀長に意見
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