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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二十九話 第二百十四条
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……残念ですが、それは出来ません」
「なんだと、貴様……」
ロボス元帥が信じられないと言った表情でグリーンヒル参謀長を見ています。そして参謀長はロボス元帥を沈痛な表情で見ていました。

「自由惑星同盟軍規定、第二百十四条に基づき、ロボス元帥閣下の総司令官職を解任します」
「……馬鹿な……、気でも狂ったか! グリーンヒル!」

ロボス元帥が怒声を上げました。元帥の顔には先程までの勝ち誇った色は有りません。そして参謀長が苦渋に満ちた声を出しました。
「正気です。もっと早く決断すべきだったと後悔しています」

思わず私は胸の前で両手を合わせていました。とりあえず大佐は罪人になることを免れました。軍法会議は残っていますが、少なくとも大佐の想いを参謀長は受け入れてくれたのです。

「馬鹿な……、何を言っている。冗談だろう、グリーンヒル」
「冗談ではありません。もっと早く決断すべきだったと言っているのです!」
何かを断ち切る様な声でした。そして大きく息を吸い込み艦橋の参謀達を見ました。

「この件については貴官達の判断は必要としない。私の判断で行う、指示に従ってくれ」
参謀達が黙って頷きました。その様子をロボス元帥が唖然として見ています。

第二百十四条を行使する場合、次席指揮官が独断で判断して行使する場合と周囲の過半数の賛同を得てから行使する場合が有ります。元々は戦闘中では過半数を求めているような余裕が無いことから定められた規定でした。

ですが今では違う意味があります。独断で行う、つまり周囲には累を及ぼさないという意味です。参謀長の言葉で、この後軍法会議が行われても査問の対象となるのは解任されたロボス元帥、解任を決断したグリーンヒル参謀長、そして第二百十四条の行使を勧めたヴァレンシュタイン大佐の三人だけとなりました。

グリーンヒル参謀長が保安主任を呼びました。そしてロボス元帥を自室に連れて行くように命じました。
「分かっているのか、グリーンヒル! お前は終わりだぞ、今なら間に合う、考え直せ!」

艦橋から連れ出される直前のロボス元帥の言葉です。身を捩りながら悲鳴のような叫びでした……。終わりなのはロボス元帥です。部下から第二百十四条を突きつけられるような人間に軍での将来は有りません……。

艦橋は静まり返っていました。
「済まんな、ヴァレンシュタイン大佐。私がもう少し早く決断していれば貴官を巻き込まずに済んだ……」
「……いえ、お気になさらずに」

グリーンヒル参謀長とヴァレンシュタイン大佐が話しています。参謀長は沈痛な表情をしていましたが、無表情に返事をする大佐に微かに苦笑を漏らしました。

「閣下! 帝国軍が強襲揚陸艦に向かっています!」
静まり返った艦橋にオペレータが警告を発しました。瞬時
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