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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
ヨツンヘイム
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ロする顔に向かって、ネザーは冷めた表情を浮かべた。

「やっと起きたか」

「……お、おはよう」

キリトは、少年漫画の主人公めいたやんちゃな風貌にそぐわないしょぼくれた表情を浮かべて訊いてきた。

「……俺、寝ちゃってた?」

「熟睡レベルにな」

「……そりゃ失礼」

「次に寝たら、もっと激しい痛みで起こしてやるからな」

大きく顔を逸らせてから、横眼でじとっとキリトを睨みつける。

とは言え、居眠りするのも無理はない状況、ではあるのだ。何せ、視界右下端に表示された現在のリアル時刻は、すでに午前2時を回っている。

ネザーはもう一度祠の出入り口を見やった。相変わらず、深い闇の中を風に巻かれた雪が舞うのみで、それ以外に動くものは一切ない。そして今、自分達はログアウトできない状態にある。

ログアウトできない事情とは、ネザー、キリト、リーファ、そしてキリトの膝でくうくう眠る小妖精のユイは、現在この地下世界(ヨツンヘイム)の奥底に閉じ込められ、地上に脱出できずにいるのだ。

無論、ゲームからの離脱だけならいくらでも可能だ。しかしこの祠は宿屋でも安全地帯でもないので、意識は現実に戻っても、後には魂のない仮想体(アバター)が一定時間取り残されてしまう。

そして放置されたアバターというのが、実によくモンスターを引き寄せるのだ。襲われれば無抵抗にHPを減らされるだけなので、あっという間に《死亡》して、セーブポイントであるシルフの街《スイルベーン》へと戻されることになる。それでは、何のために彼方のシルフ領から遥々(はるばる)旅してきたのかわからない。

3人の目的は、アルヴヘイムの中央都市である《アルン》へと辿り着くことだ。

スイルベーンを出発したのが、今日__正確には昨日の夕方。広大な森林地帯を飛び越え、長い鉱山トンネルを駆け抜け、オマケに敵対するサラマンダー族の襲撃をも退けて、シルフ領主サクヤの一行に感謝されつつ別れたのが午前1時過ぎ。

途中で何度か休憩を取ったとは言え、その時点で連続ダイブも8時間に達していた。央都アルンはまだ遥か彼方に霞み、とてもすぐには到着できそうになかったので、今日の冒険はここらで切り上げて最寄りの宿屋でログアウトしようということになり、3人はちょうど視界に入った森の中の小村にこれ幸いと降下した。

あの時、面倒でもマップを呼び出して、村の名前なり宿屋の有無なりを確認するべきだったのだ。まさか__

「__まさか、あの村が丸ごとモンスターの擬態だったなんてなぁ……」

ちょうど同じ記憶を振り返っていたらしいキリトがため息混じりに言った。ネザーもはぁっと息を吐き出し、頷く。

「たしかに、迂闊だった。……擬態するのは《奴ら》だけで充分だ」

最後の一言だけ
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