暁 〜小説投稿サイト〜
フロンティアを駆け抜けて
融解する鋼の心
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アルカとのマルチバトル。先制してウツボットは倒したもののアルカはジェムとダイバを直接攻撃する姿勢を崩さない。アルカの指示でエンニュートがまき散らしたピンク色の霧と共に立ち込め、甘い刺激臭がダイバの鼻を刺す。しかし特に体に異常はなかった。だがアルカの哄笑は何か嫌な予感をさせる。ダイバは隣のジェムに呼びかけた。

「ジェム、何か変化はない……?」
「大丈夫、私は元気。心配してくれるダイバ君は優しいね……大好きだよ?」
「は?」

 ジェムの方を見ると、顔が異常に赤らんでいて肩も上下している。熱を出す毒か、と思ったがジェムは平気だと言うし『神秘の守り』は確かに聞いている。ダイバの困惑などお構いなしにジェムは、ダイバの方に突然飛びついてきた。

「うわっ!? 何やってるのさ、今どういう状況かわかって――」
「うん……私がダイバ君を守ってあげるよ? それで一緒にアルカさんを、やっつけよう?」
「なっ……!」

 ダイバはぞっとした。ドラコに対して自分の事は好きじゃないけど似た境遇の苦しみを抱える人として協力したいと言い、ついさっきまでアルカと真剣に伝えたいことがあると言っていたのは何だったのかと思えるくらいその顔は緩みきっていて、アルカに背を向けダイバの事しか見ていなかった。いくらメタグロスの腕の上と言えど二人で乗るのはバランスが悪い。少しぐらつく。そして支えを欲しがるようにジェムがさらにダイバを抱きしめる。体全体も熱を帯びていて、吐く息が湯気のように熱くなっていた。明らかにエンニュートの毒のせいだ。ダイバはアルカを睨みつける。

「……おい、ジェムに何した」
「何だと思います? といってもお子様にはわかりませんよねえ。『メロメロ』の毒ですよ。吸い込んだ人は異性を見るとその人が好きでたまらなくなるのです。個人差はありますが……ま、もともと父親への幻想に溺れるジェムにはよく効いているみたいですね」
「ううん、お父様の事は嫌いじゃないけど……今は、ダイバ君の方がもーっと好きよ?」

 ジェムはダイバの身体を包み込むように抱きしめ、額をくっつける。ダイバは対抗しようとしたが、10歳のダイバと13歳のジェムではさすがに厳しい。ジェムは遠慮なく抱きしめているのに対しダイバは今の状況に戸惑っているのもある。

「ふふふ、良かったじゃないですか。そんなに好かれて、昨日の夜会ったときはジェムに手を出したことを怒ってましたよね? 僕の物に手を出すなって。今なら正真正銘あなたのものですよ? 尤も、わたしに負けるまでのほんの少しの間ですが」

 昨夜突然勝負を挑まれた時にダイバは勝手にジェムを奪おうとしたアルカを加減なしに攻撃した。その時はてんで大したことはなくて、でも攻めきれずにいるうちにチャンピオンが割って入ってき
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