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歌集「春雪花」
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 眺むれば

  想い侘しき

   紅の

 雲間に洩るる

    夕の静けき



 ふと遠くを眺めたら…雲の端々から、夕焼けの西陽が洩れだしていた…。

 それの風景はどこか寂しげで、心の中まで沁みるようだった…。

 私がこうしている間にも彼は…私の知らない誰かといるのだ…。

 想いは募り…切なさに苛まれる…。


 しかし…この風景は、そんな私すら包み込み…静かに夜へと誘っていった…。



 吹く風に

  問ふは届かぬ

   言の葉の

 返らぬ声に

    月ぞ歪めり



 昼は春を感じる麗らかな日和だったが、夜は未だ寒く、冷たい風が地を走る…。

 彼は私を思い出すことがあるだろうか…会いたい…そう洩らした私の声は、風に掠め取られ…夜の闇へと霧散した…。

 彼は何も気付かない…恋しい想いを言葉にしても、届くはずもなく…。

 ただ一人溜め息をつき山際に落ち行く三日月を眺める…。


 寂しさに歪む三日月を…。




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