暁 〜小説投稿サイト〜
疫病
第二章

[8]前話 [2]次話
「わかったな」
「はい、それでは」
「そのことは」
「すぐにそうしろ」
 子爵は実際に即座にだった、黒死病に罹った者達を街や村の端に家族から無理に引き離して隔離し酷い場合は実際に家族ごとその家に押し込め家に火を点けて焼き殺した、そうされた者は実に多くに及び。
 病に罹っていない民達は眉を顰めさせてひそひそと話した。
「酷いな」
「領主様は何と無慈悲な方じゃ」
「お医者様を呼んでくれずか」
「こうして隔離するか焼き殺す」
「わしの子もそうなった」
「俺の女房もだ」
「兄貴の一家は皆焼き殺された、罹っていない子供達まで」
 こうした声が領地に満ちていた。
「惨いのう」
「何と冷酷な領主様じゃ」
「何故病に罹った者をお救いになられぬ」
「罹った者は穢れという」
「穢れとして容赦されぬらしい」
「冷たい方じゃ」
「何ともな」
 こう話すのだった、そしてだった。
 彼等は子爵の為すことに怨嗟の声を出していった、しかし子爵の為すことは変わらず多くの者が黒死病に罹った村があると聞いてだ。
 家臣達にだ、やはり冷酷に告げた。
「その村は全てだ」
「あの、全てですか」
「村全てをですか」
「全ての村人をですか」
「焼けと」
「そうだ、村全てを焼け」
 こう言うのだった。
「いいな」
「あの、ですが」
「村には罹っていない者もまだいますが」
「それも多く」
「中には老人、女子供も多いです」
「ですが」
「何度も言う、罹った者は余の民でなくだ」
 そしてというのだ。
「人でもない、穢れでしかない」
「だからですか」
「その村をですか」
「全て焼く」
「そうされますか」
「そうしろ、いいな」
 こう告げてだ、その村に軍を送り完全に囲んだ上で火攻めにした。逃げようとする者は容赦なく殺させた。
 だが仕事をする兵達は焼ける村とその中で生きながら焼かれ泣き叫ぶ村人達を見てだ、苦々しい顔で話した。
「ここまですることがあるのか」
「これは人の為すことではないぞ」
「あまりにも非道ではないか」
「病に罹っただけでこの仕打ちか」
「しかも罹っていない者も容赦しない」
「ご領主様は酷過ぎる」
「あまりにも無慈悲ではないか」
 こう言うのだった。
「病に罹れば終わりか」
「その者は殺す」
「生きる資格がない」
「そういうことか」
「こんなことをしていいのか」
「何故救われない」
「人してどうなのか」
 こうした言葉が出るばかりだった。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ