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英雄
第七章

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「それでもですね」
「そうだね、僕達がいてこそ」
「海外協力隊も動けます」
「そうだね、じゃあこれからもね」
「今のお仕事にですね」
「頑張るよ、海外協力には行きたいけれど」 
 まだこの気持ちはある、だがそれでもだった。
「僕は僕が今出来ることをね」
「されますね」
「そうしていくよ」
 こう言ってだ、彼は今の仕事にやりがいを見付けた。そうして二年三年と働いていってだ。結婚もしてだった。
 子供も生まれた、そして子供達は彼等の友人達に言うのだった。
「お父さん凄いんだぞ」
「人を助けるお仕事してるんだぞ」
「海外協力隊の人達を助けてるんだ」
「人を助ける人達を助けているんだ」
 そうしているというにだ。
「お父さんは英雄なんだ」
「英雄を助けている英雄なんだ」
「僕達も絶対にそうなる」
「大人になったらそうなるんだ」
 こう言うのだった、そしてだった。
 その話を聞いてだ、マルコは妻に笑顔で言った。
「僕は英雄になっているんだね」
「ええ、そうみたいね」
 妻のリッラは夫に笑顔で応えた。
「お義父さんとお義母さんもそう言ってるけれど」
「お父さんとお母さんも」
「ええ、あなたは英雄だって」
「シュバイツァー博士にも六士先生にもなれなかったけれどね」
 彼がかつて憧れていた彼が思う英雄達の様にはだ。
「けれど今の僕はなんだね」
「そのシュバイツァー博士や六士先生を助けている」
「そうした英雄なんだね」
「そういうことよ」
「こうした英雄もいるんだね」
 マルコはしみじみとした口調で述べた。
「いや、僕もそのことはわかっていなかったよ」
「あなた自身もなのね」
「どうにもね、けれど言われてみれば」
 確かにだった。
「それもまた英雄だね」
「そうなるわね」
「僕は英雄になっていたんだ」
 マルコの口調はしみじみとしたものになっていた。
「人を助けている」
「気付かないうちにでも」
「そうなるなんて、けれど僕がそうなら」
 それならと言うのだった。
「僕はこれからもね」
「人を助けてなのね」
「英雄を助ける英雄になるよ」
「そうなってね、じゃあね」
「これからも頑張るよ」
「そうしてね」
 リッラは見事な茶色の髪とはっきりとした目が目立つ整った顔で夫に言った、そうして子供達と共に家に夕食を食べている夫を癒した、一人の英雄を。


英雄   完


                     2017・1・14
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