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隠れた趣味
第五章
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 しかし家でだ、休日競馬新聞を手に競馬の放送に熱中している父に子供達は首を傾げさせながら尋ねた。
「お父さん競馬勝ってるの?」
「どうなの?」
「負けてるな」 
 父は子供達にあっさりと答えた、新聞で馬達を細かくチェックしつつ。
「トータルで言うと」
「その割には明るいけれど」
「負けてるっていうのね」
「お父さんのお小遣いでやってるからな」
 ここから外れることはないというのだ。
「負けたらそれまでさ」
「そうなんだ」
「お金はあまりかけてないの」
「そうさ」
「それで楽しいの?」
「負けててしかもお金を損してるのに」 
 子供達は父の言葉を聞いてあらためて首を傾げさせた、そしてそのうえで父に対してあらためて尋ねた。
「勝たないと面白くないんじゃ」
「お金も儲けないと」
「勝とう、負けようと思ってするものじゃないんだ」
 大場は子供達に笑って言った。
「楽しむものなんだよ」
「それが競馬なの」
「そうなの」
「そうだ、どのレースでどの騎手がいいかどの馬がいいか」
 彼は競馬のことを細かく話した。
「解説も聞きながらな」
「楽しむの」
「それがいいの」
「そうだ、競馬は勝つものでも儲けるものでもないんだ」
 大場はとかくこのことを否定した、競馬で多くの者が求めるものを。
「楽しむんだ、ただそれだけなんだ」
「勝つとか負けるじゃなくて」
「ただ楽しむだけなの」
「そうだ、欲なんか出したらのめり込んでな」
 そしてというのだ。
「趣味じゃなくなるからな」
「じゃあお父さんの趣味は競馬なんだ」
「それになるの」
「そうだ、だから今も楽しんでるんだ」
 趣味のそれをというのだ。
「こうしてな」
「わかった様なわからない様な」
「そうよね」
 子供達はここまで父の言葉を聞いて顔を見合わせた、そしてそのうえでどちらもいぶかしむ顔を見た。
「楽しむだけって」
「何なのかしら」
「負けてもいい、損をしてもいいって」
「全然面白くなさそう」
「その面白さもわかる時があるかもな」
 わかっていない子供達にだ、大場はこうも言った。
「そのうちな」
「そのうちなの」
「わかるかも知れないの」
「ああ、ただ素直に楽しめればこんないいものはない」
「競馬も?」
「それも?」
「お父さんは競馬だが趣味なら何でもだ」
 それこそというのだ。
「そう出来れば本当に幸せだぞ」
「何かよくわからないけれどお父さん幸せなんだ」
「競馬をしていて」
「ああ幸せだ、じゃあそろそろレースがはじまるからな」
 テレビの画面を凝視してだ、子供達に断る様に言った。
「話は後だ、いいな」
「うん、じゃあね」
「楽しんでね、競馬」
 子供達はその父にこう言うしかなかった、そしてレー
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