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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十八話 その死の意味するところ
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「ヴァレンシュタイン少佐は冷たそうに見えるけど本当は優しい人なんだと思いますよ。時々ロケットペンダントを見て溜息を吐いていましたけど、多分あれは遺髪を入れたんじゃないかな……。死んだのは余程親しい人だったんでしょう」

デア・デッケンの言葉に皆が黙り込んだ。誰よりも冷徹に、冷酷に戦争を指揮した男だった。彼が指揮を執ったから損害は驚くほど少なかった。ローゼンリッターの戦死者は十人に満たない。

彼はヴァーンシャッフェ大佐の追撃要請をにべも無く断わった。彼が追撃を許していればローゼンリッターの戦死者の数は格段に跳ね上がっただろう。
“名誉とか決着とか、そんな物のために戦うほど私は酔狂じゃありません”

その非情さ、冷徹さはいっそ爽快なほどだったが、それは仮面だというのか……。仮面をかぶる事で味方を救った。そして今彼はたった一人で仮面の下で苦しんでいる……。

スクリーンを見た。連絡艇はかなり小さくなっている。眼を凝らさなければ見えない。重苦しい空気を振り払おうとするかのようにリンツが頭を振った。そして場違いとも言える明るい声を出す。

「第五艦隊が出迎えですか、凄いですね。最高評議会議長だって有り得ないでしょう。皇帝並みの待遇だな」
皇帝並みの待遇、リンツの言葉に皆が苦笑した。この同盟で皇帝並みの待遇、確かに有り得ない。

「何でも統合作戦本部長、シトレ元帥の命令だそうだ。ヴァレンシュタイン少佐はシトレ元帥のお気に入り、というか秘蔵っ子らしいな」
俺の言葉にリンツがおどけたようなしぐさで口笛を吹いた。ブルームハルトとデア・デッケンが再び苦笑した。

皆分かっている。リンツがおどける事で皆の気持を軽くしようとしている事を。馬鹿なのではない、馬鹿を演じているだけだ。演じる事で周りの気持を切り替えさせようとしている……。本当は誰よりも熱い心を持っている男だ。誰よりもヴァレンシュタインの事を心配しているだろう。

リンツが表情を変えた。
「我々も移動が近いと聞きましたが?」
「来週には輸送船が迎えに来る。準備をしておけ」
俺の返事にリンツは頷くとまた問いかけて来た。

「次はイゼルローン要塞ですか」
「おそらくそうだろう。今回の戦いで相手にかなりの打撃を与えた。上層部としては一気にイゼルローン要塞を攻略、そう考えてもおかしくない」

皆黙り込んだ。イゼルローン要塞を落とす、その難しさを思ったのだろう。
「落ちますかね、あれが」
そんな深刻そうな顔をするな、デア・デッケン。

「分からんな、まあ、俺達は給料分の仕事をするだけだ」
「まあ、そうですね」
デア・デッケンが笑みを浮かべた。そうそう、それで良いんだ、デア・デッケン。余り難しく考えるな。

ブルームハルトも同じ事を考えたのだろう。陽気な
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