第三章
[8]前話 [2]次話
「あとお酒もね」
「飲んで」
「そうしてね」
「楽しめばいいね」
「ええ、そうしましょう」
こう彼に言った。
「夜はね」
「二人でね」
「それがね」
また私の方から言った、ここでも。
「最後のね」
「二人の夜だね」
「そうなるわ」
そうした夜のことを思ってもだ、やっぱり思うところはなかった。
それでだ、彼にこうも言った。
「じゃあね」
「うん、最後はね」
「海老とお酒を楽しみましょう」
「それじゃあね」
こうした話だった、本当に。
二人で街から大仏、極楽寺に海も観て鎌倉幕府由縁の場所を観て回った、観て回った場所は多くてお昼も一緒に食べたけれど。
何も思わない、寂しく寒いままだった。
そしてだ、私は三時に入った喫茶店で彼に言った。
「お昼美味しかったわね」
「そうだね」
大仏のことも極楽寺のことも言わずだ、言ったのはこのことだった。
「フランス料理のお店で」
「お店も奇麗でね」
「よかったわね」
「そうだね」
「鎌倉にはああしたお店も多いけれど」
洒落た奇麗な本格的レストランがだ。
「楽しめたわ」
「また行くよ」
「そうするのね」
「君もそうするのかな」
「そうね」
喫茶店の紅茶を飲みながら応えた、この紅茶も美味しい。
「そうするわ」
「それじゃあね」
「また来た時に」
鎌倉、この街にだ。
「行くわ」
「そしてこのお店にも」
「このお店も有名なのよ」
お昼に言ったレストランもだ。
「どちらもね」
「ガイドブックにも載っていたしね」
「ええ、美味しいから」
「だからだね」
「また来るわ」
この喫茶店にもだ。
「それでこの紅茶飲むわ」
「そうするんだね、じゃあ僕もね」
「そうしたらいいわね」
「お互いにね」
こうしたことを話した、空虚な雰囲気のまま。
それで夕方も、そろそろ行く場所が閉まっていくまで回ってだ。私達は旅館に戻った。それぞれお風呂に入って浴衣に着替えて海老のお造りや味噌汁を日本酒と一緒に楽しんでも。
私は二人で泊まっているお部屋で卓を囲んで座って食べている彼にだ、こう言った。
「これからどうするの?」
「飲もうかな」
これが彼の返事だった。
「またお風呂に入って」
「そうするのね」
「君はどうするのかな」
「お外に出てもね」
女の夜の街の一人歩きは危ないしだ。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ