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自然地理ドラゴン
二章 追いつかない進化 - 飽食の町マーシア -
第27話 湖 − それは陸水が生み出した儚き地形 −
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 事件後、シドウら三人は町の庁舎に向かった。

 町長宅でのドラゴン姿は、現場にいた自警団や冒険者以外にも目撃されていた。情報は街中に拡散中と思われるが、まだシドウの顔までは知られていないようだ。三人が道を歩いていても、すれ違う人たちから特段の反応は見られなかった。



 庁舎に着く頃には、既に日も沈みかけていた。

 普段であれば、もう警備以外の人間はいない時間である。
 だが、今日は慌ただしく人が動いていた。
 庁舎は緊急対策本部となっており、職員たちが皆残っていたほか、冒険者ギルドの長や自警団の団長なども詰めていたからである。
 
 会議室に通されたシドウら三人は、中年の副町長、壮年で白髪交じりの冒険者ギルド長、そしてやや若めの青年である自警団の団長の三人と面会した。

 イストポートのときのように、生い立ちからネチネチと聴取をされることもシドウは覚悟していた。
 しかしちょうどそのときに、イストポートの冒険者ギルドから送られてきたシドウの資料がタイミングよく到着。幸いにもそのようなことにはならなかった。



 今回の件の報告を一通り済ませると、さっそく今後問題になるであろうことを話し合った。

 すなわち、
「今後、生前の記憶を持ったアンデッドが出現した場合の対応は?」
 ということであったが……。

「アンデッド化した瞬間に、人間としては死亡。現時点ではそうするしかない」

 生前の記憶を持っていようが、もうそれは人間ではない――。
 予想はしていたが、そのような結論となった。

 シドウは話し合いの途中、
「捕えて行政側で裁く≠ニいう選択肢は、やはりあり得ないんですか?」
 という確認も、いちおうはしてみた。

 シドウは地理学者である師匠から、アンデッドは『生物の定義から外れる存在』と教わっているし、シドウ本人もその考えは強固である。
 だが、今回のアンデッド化町長が犯人によって殺される光景を()の当たりにし、モヤモヤがあったのもまた事実だったのだ。

 それに対して副町長は、
「町としては、アンデッド化した元人間を罪人として引き渡されても困る」
 と、やや困惑しながら、そう答えた。
 色々ややこしくなってしまうのが、その理由らしい。

 現状でもアンデッドを生成する″s為は禁忌である。
 今回亡くなった町長のように自らがアンデッドになる行為≠ヘ前例がないため、禁忌とはされていないのだが、それは早急に禁忌とするそうである。

 これは当然の話で、誰でも手軽に生前の記憶を持ったままアンデッド化できるようになって、それが合法ということになってしまうと、死の間際にアンデッド化する人間が続出する可能性がある。禁忌とするのは理に適っている。

 
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