第二章
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「だから多分な」
「卒業式の理科室ね」
「見つかる心配ないだろ」
「ええ、確かにね」
その心配は確かになかった。卒業式は皆の目が特定のポイントに集中する。理科室はその範囲外だから。
「それはないわね」
「だよな。少なくともな」
「夕方の海の岩場の物陰とかは」
「凄く見つかりやすくないか?」
「今思うとそうね」
思えば危ないことをした。本当に見つかってもおかしくなかった。
「危なかったわ」
「実際に見つかってたんじゃないのか?」
「そうかも」
今思えばそうだった。
「密かに写真とかに撮られてて」
「そうした雑誌とかサイトに投稿されてたかもな」
「目線だけ入れられてて」
そうした手の雑誌やサイトのことは私も知っている。目線やモザイクで誰かわからないようにされている娘に自分がなっているかも知れないとは夢にも思わなかった。
「出ていたかも知れないのね」
「かもな」
「失敗したわ、本当に」
「若気の至りってやつだな」
「そうね。もう絶対にしないわ」
「そうしてくれよ。軽率なことはしないようにな」
「するならね」
彼のその顔を見て私も言う。
「旅館の中でね」
「そこか」
「そう。そこでしましょう」
「じゃあな、その時はな」
「ええ、そうしましょう」
「で、話は戻すけれどな」
彼の方から言ってきた。
「その相手な」
「ええ、その同級生ね」
「付き合ってたんだよな」
「そういうことよ。テニス部にいたけれど」
だがそれでもだと。私は言い加えた。
「ちょっと悪くてね」
「煙草でも吸ってたのかよ」
「そうよ」
「まあ。よくある話だよな」
彼は煙草は吸わない。けれど彼はだった。
「それはな」
「まあね。だから傍に寄ると」
「煙草臭かったんだな」
「そうなのよ。少しね」
「成程な。そういう奴だったんだな」
「相手も私もはじめてで」
「俺と同じか」
「そうね。同じね」
二人で顔を見合わせて笑うことになった。
「お互いはじめての相手とはそれなりにね」
「ロマンスがあったんだな」
「で、今はね」
「その時は思いも寄らない相手とな」
「こうしているわね」
「人間ってわからないよな」
彼はこうも言った。
「本当にな」
「そうね。本当にね」
「けれどな」
「けれど?」
「俺達は俺達でな」
私達二人でという意味の言葉だった。
「一緒にロマンスってやつをな」
「作ろうっていうのね」
「そいつのことはもう忘れたっていうかな」
「どうでもよくなったかっていうのね」
「ああ、そうだよな」
「あなたもよ
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