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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十話 思惑
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宇宙暦 794年 2月 4日  ハイネセン 後方勤務本部 ミハマ・サアヤ


ヴァンフリート4=2への輸送計画が完成しました。周囲の人に聞きながらようやく完成した輸送計画です。ヴァレンシュタイン少佐に見せると一読した後、キャゼルヌ大佐に見せるようにと言われました。大佐は席に居ません、私室に居ます。はっきり言います、あの部屋には行きたくない……。

でも私の隣には絶対零度の大魔王が居ます。言う事をきかないと瞬時にしてブリザードが……。ブリザードが発生すれば私だけでなく周囲も凍りつくでしょう。周りに迷惑をかける前に大佐の私室に向かいました。

「大佐、ヴァンフリート4=2への輸送計画が完成しました。確認を御願いします」
私の御願いに大佐は黙って手を差し出し計画書を受け取りました。そして輸送計画書を見て少しだけ考え込みます。

「中尉、ヴァレンシュタイン少佐はこの計画書を見ているのか?」
「はい、大佐にお見せするようにと」
「……」
なんか嫌な感じ……。

「あの、何かおかしいのでしょうか?」
「いや、そうじゃない……。もっと輸送計画を複雑に、分かり難くするかと思ったのでね」
すみません、どうせ私は単純です。口には出せないので心の中で毒づきました。

「少佐は急いでいるようだな、戦争が始まるのは間近だと見ているようだ」
「……」
「厳しい戦いになるかもしれん……。中尉、必ず戻って来いよ」
「……はい」

思わず身が引き締まりました。私が経験した戦争はアルレスハイムの会戦のみ……、あれは戦いと言えるようなものじゃありません。一方的にサイオキシン麻薬で混乱する敵を叩きのめしただけ。ヴァンフリートではそうはならない事は少佐の様子を見れば想像はつきます……。生きて戻れるかどうか……。

私達が出立するのは二月十五日です。後残り十一日……。



宇宙暦 794年 2月 6日  ハイネセン 統合作戦本部 アレックス・キャゼルヌ



「随分参っているようだな、キャゼルヌ」
「色んな所から責められています。あんなに物資を使ってどうするつもりだ、どうして貴官が部隊移動に口を出すのだと。実際閉店間際の在庫処分みたいなものですよ」

俺の言葉にシトレ本部長は軽く苦笑した。この狸親父、誰の所為で俺が苦労していると思っている……。

今回、ヴァレンシュタインの要求は最優先で叶えられている。一少佐の要求が最優先で叶えられる事など本来ありえない。その有り得ない事が起きている理由は全てを本部長命令として行なっているからだ。俺はその命令の伝達者だと周囲からは思われている。

「本部長には文句が言えませんからね、皆私に言うんです」
「そうか、御苦労だな、大佐」
今度は声を上げてシトレ本部長が笑った。全く気楽なも
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