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夢幻水滸伝
第一話 夢の世界その二

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「部活もしてな」
「剣道部か」
「そっちもな」
「つまり御前の学園生活は充実してるんやな」
「これでもな」
「ええこっちゃ、ほなわしも頑張ろか」
 芥川は中里の言葉を聞いて言った。
「しっかりとな」
「落語と受験をか」
「忍術の勉強もや」
 こちらもというのだ。
「頑張るで」
「忍術もか」
「そや」
 そちらもというのだ。
「頑張るで」
「忍術な」
「言うけど忍術ってのは案外地味なもんや」
「それ知ってるわ、蝦蟇出したりせんのやろ」
「手裏剣同時に何発も投げたり五メートルも六メートルもジャンプせんで」
「それは漫画やな」
 横山光輝や白土三平の世界である。
「蝦蟇は絶対ないわ」
「変化したりな」
「それ確か杉浦茂の世界やな」
「猿飛佐助名作やで」
「図書館で読んだけど面白いわ」
「そやろ」
「けれどほんまの忍術はやな」
 中里はあらためてだ、芥川に言った。
「ちゃうな」
「それ自分も知ってるやろ」
「まあな。隠れて逃げるものか」
「戦うのは最後の最後や」
「逃げて隠れるか」
「スパイやな」
 簡単にだ、芥川は現代の例えで話した。
「要するに」
「そのものやな」
「そや、つまり僕はスパイの勉強もしてるんや」
「そやねんな」
「とはいっても落語家志望や」
「それで飯食えたらええな」
「まあな、それで自分は経済学部からか」
 今度は芥川が中里に問うた。
「何になるんや」
「何にってサラリーマンや」
「サラリーマンかいな」
「そや、それになってや」
 そうしてというのだ。
「頑張って稼ぐで」
「サラリーマンって稼げるか?」
「普通に生きられるだけな」
「夢ないのう。どかっと夢持ったらどないや」
「僕そんな夢ないで」
「普通に生きてかいな」
「そや、家庭持ってや」
 中里はここで芥川にこうも言ったのだった。
「子供九人持つで」
「生活費大変やで」
「いやいや、その為に稼ぐんや」
「九人か」
「それ位欲しいわ」
「そんだけおったら凄いで」
 芥川は中里、彼の想像の中では顔は十代のままでスーツを着た彼が顔は出ないエプロンの奥さんと二人で九人の小さな子や赤子に囲まれている姿を想像して言った。
「もう戦争やで」
「九人もおったらかいな」
「そや」
 まさにというのだ。
「ほんまにな」
「それでかいな」
「あんまり進められんわ」
「いやいや、それが僕の夢やねん」
「子供は九人か」
「全員健やかに育てるで」
「それはでっかい夢やな」
 芥川も話を聞いて言った。
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