第六十二部第四章 選挙前日その八
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「この星系のコーヒーもいいものですね」
「閣下は普段はどちらのコーヒーを飲まれているのでしょうか」
「オーストリアのものをです」
この国の産のものをというのだ。
「飲んでいます」
「オーストリアですか」
「あの国の産でしたか」
「はい、そうです」
「オーストリアではヂュッセルブルグですね」
「あの星系の産になりますね」
「そうです」
まさにその星系の産だというのだ。
「他の産のコーヒーも飲みますが」
「一番はオーストリアのですね」
「デュッセルドルフ産なのですね」
「そうです、そして飲む種類は」
「それですね」
「ウィンナーですね」
「これが一番好きです」
コーヒーならばというのだ。
「コーヒーにクリームはよく合います」
「確かに。いい組み合わせですね」
長老の一人がモンサルヴァートのその言葉に応える、見れば彼もまたウィンナーコーヒーを飲んでいる。
「このコーヒーは」
「はい、ですから」
それ故にというのだ。
「私もこうして今も」
「飲まれていますね」
「左様です」
その通りだというのだ。
「コーヒーはよく飲みますが」
「その中でも、ですね」
「最も飲む種類です」
それがこのウィンナーコーヒーだというのだ。
「これこそが」
「ではおかわりは」
「頂いて宜しいでしょうか」
「是非」
こう返す長老達だった。
「飲まれて下さい」
「遠慮なさらずに」
「それでは」
モンサルヴァートは彼等の好意に甘えることにした、そうしてそのチョコレートクッキーを食べコーヒーを飲んだ、するとすぐにだった。
次のウィンナーコーヒーが来た、それも飲んでだった。
この時は楽しんだ、しかし選挙の結果は覚悟していた。
それはカミュも同じだった、彼は選挙のスタッフの者達が沈んでいるのを見て冷静そのものの顔で言った。
「負けるとわかっているからか」
「はい、そうです」
「残念ですが」
「ですからどうしても」
「気持ちが暗くなります」
「どうしようもなく」
「そうか、しかしだ」
それは、というのだ。
「受け入れてだ」
「そして、ですか」
「そのうえで、ですか」
「背筋を伸ばすことだ」
彼等の背が丸くなっているのを見ての言葉だ。
「こうした時でもな」
「敗れる時でも」
「そうした時でもですか」
「残念だが私は敗れる」
今回のエウロパ総統選挙にというのだ。
「それはもう止められない、しかしだ」
「その敗北を受け入れる」
「そうあるべきですか」
「敗北する、しかしだ」
それでもだというのだ。
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