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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
釣り自慢
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「私はニシダといいます。ここでは釣り師。日本では東都高速線という会社の安全部長をしておりました。名刺が無くてすみませんな」

また、わはは、と笑う。

「………」

俺とキリトは、この男がこの世界にいる理由を何となく察していた。東都高速線はアーガスと提携していたネットワーク運営企業だ。SAOのサーバー群に繋がる経路も手掛けていたはずである。

「俺はキリトといいます。こっちはネザー。俺、最近上の層から越してきました。……ニシダさんは、やはり……SAOの回線保守の……?」

「一応責任者ということになっとりました」

頷いたニシダをキリトは複雑な心境で見やった。ならばこの男は業務の上で事件に巻き込まれたわけだ。

「いやあ、何もログインする必要はないと上には言われてたんですがね、自分の仕事はこの眼で見ないと収まらない性分でして、年寄りの冷や水がとんだことになりましたわ」

SAO世界に囚われの身になりながらなぜ笑っていられるのか、不思議だった。

笑いながら、すい、と竿を振る動作は見事なものだった。年季が入っている。話し好きな人物のようで、俺とキリトの言葉を待たず喋り続ける。

「私の他にも、何だかんだでここに来てしまったいい歳の親父が2、30人ほどはいるようですな。大抵は最初の街でおとなしくしとるようですが、私はこれが三度の飯より好きでしてね」

竿をクイッとしゃくってみせる。

「いい川やら湖を探してとうとうこんな所まで登ってきてしまいましたわ」

「な、なるほど……。この層にはモンスターも出ませんしね」

ニシダは、キリトの言葉にはニヤリと笑っただけで答えず、「どうです、上のほうにはいいポイントがありますかな?」と聞いてきた。

「うーん……。61層は全面湖、というより海で、相当な大物が釣れるようですよ」

「ほうほう!それは一度行ってみませんとな」

その時、ニシダの垂らした糸の先で、ウキが勢いよく沈み込んだ。 間髪かんはつ入れずニシダの腕が動き、ビシッと竿を合わせる。本来の腕もさることながら釣りスキルの数値もかなりのものだろう。

「……デカいな」

身を乗り出す俺の隣で、ニシダは悠然と竿を操り、水面から青く大きな魚体を一気に抜き出した。魚はしばしニシダの手元で跳ねた後、自動でアイテムウィンドウに格納され、消滅する。

「お見事……!」

キリトに言われ、ニシダは照れたように笑うと、

「いやぁ、ここでの釣りはスキルの数値次第ですから」

と頭を()いた。

「ただ、釣れるのはいいんですが、料理のほうはどうもねぇ……。煮付けや刺身で食べたいもんですが、醤油無しじゃどうにもなりませんね」

「あー……っと……」

キリトは一瞬迷った。他
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