暁 〜小説投稿サイト〜
自然地理ドラゴン
一章 小さき魔物 - 海竜と共生する都市イストポート -
第14話 母親
[2/3]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
はピヨピヨを両手でつかむと、シドウとティア、それぞれの顔に近づけていく。
 ピヨピヨは二人の顔を舐めた。

「ほら、ピヨピヨもげんきだしてっていってるよ」
「慰めてもらっちゃった……ありがとう。ほら、シドウもあんまり暗くなってるとよくないよ。もう泣かない泣かない」
「だから泣いてな――」

 今度は、海のほうで非常に大きな波の音がした。
 このあたりの海はいつも穏やからしいので、明らかにイレギュラーな音。
 この場にいる全員が、一斉に海を見る。

「……!」
「えっ?」

 しかし、驚いたのはシドウとティアの二人だけだった。

 首を出し、そして近づいてきたのは、成体のシーサーペントだった。
 港に来ていたシーサーペントと、同じくらいの大きさ。
 だが頭部にツノがない。しかも全体的に少し丸みを帯びているように見える。

「ピヨピヨのもうひとりのおやだ」

 少女のその言葉で、シドウは理解した。
 死亡したシーサーペントは父親のほうで、いま目の前にいるのは母親なのだ、と。

 その成体シーサーペントは、波打ち際にかなり近いところまで来て、止まった。
 シドウは立ち上がり、吸い込まれるように波打ち際に寄っていった。

「あなたは、母親……なんですね……?」

 魔王軍の共用語でそう問いかけるシドウに対し、シーサーペントは答えなかった。
 ただただ静かに、シドウを見下ろしていた。

「復讐に……来たわけでは、ないんですね……」

 シーサーペントの目に、殺気などはなかった。
 むしろ、上から包み込むような、温かく穏やかな瞳だった。

「俺は、どうすれば……いいんですか」

 シーサーペントはその質問にも、そのまま見つめているだけだった。
 しかし、

「お願いします。教えてください」

 という懇願を聞くと、口を動かした。

「あとは――」

「あとは……?」

「頼む――」

「……!」

 シーサーペントは共用語でそれだけを言うと、今度はシドウから少し後ろに視線を外し、小さな声を上げた。
 すると後ろからピヨピヨがやってきて、シドウの右手をペロリと一舐めすると、海にいるシーサーペント――おそらく母親の元に、戻った。

 そして、親子そろって、波打ち際から離れていった。
 いつのまにか波打ち際にやってきていた子供たちから、「バイバイ」「またね」と挨拶が飛ぶ。

 ピヨピヨはそれに対し、振り返って小さくジャンプすることで答えた。



「そうか……」

 シドウは一つの結論に達した。

「ティア」
「うん?」

 ティアも立ち上がっており、シドウのすぐ後ろにいた。

「これから市庁舎にもう一度行ってこよう」
「いきな
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ