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エターナルユースの妖精王
DAY BREAK
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《頑張ってこいって、見送ったんだよな?》
「…」
《一人前の魔導士になれるようにって、思ったんだよな?》
「……」

間を置いて、こくりと頷くのが見えた。
言葉がないのは黙らなければいけない状況だから、ではない。ずばずばと的確な指摘を受けてぐうの音も出ないような、そんな状態だからだった。現にフードの奥では、ちょっと後悔し始めたのか目がゆらりと揺らいでいる。
その様子を傍らで眺めて、パーシヴァルは大きく息を吐いてから問いかけた。

《なのに何で俺達、さっきから馬車追ってんだよ!!?》





パーシヴァルの所有者であり上であるニアは、甘い。
ただし、誰彼構わず優しく接するのかと聞かれると答えは否だ。彼が甘いのは懐の最奥にまで入れた相手のみ。人とある程度距離を置きたがるというか、ある種の人見知りというか、あまり人付き合いの範囲が広くないニアの懐に入れる存在はまず少なくて、だからこそ満遍なく配るはずの優しさが一人ずつに強く注がれるのだろうな、とパーシヴァルを始めとする円卓騎士団の面々は思っている。
厳しくなかった訳ではない。一度武器を取れば稽古だろうが遠慮容赦なく攻め込んできたし、突き放す時は徹底して突き放す。一人一人に宛てた訓練メニューも甘さの欠片もないような厳しいもので、新入りはもちろん、騎士団の面々すら最初は絶句したものだ。
が、それでもニアは甘いと思う。そう断言出来る。心配性と言い換えてもいい。序でに後ろ向きだ。

「…だって」
《女子かアンタは。……解ってるよ、見送ったはいいけど不安なんだろ?相手は権力者で、スケベで変態で、そこに年頃の女の子を行かせるってのが不安なのは俺だって同じだ。けどな、いつまでも面倒見てられる訳じゃないって事くらい、アンタだって解ってるんだろ》

アンタがあのギルドに入るってなら話は別だが、と内心で付け加える。
―――話はマーリンから聞いていた。ニアが心惹かれている場所がある事、けれどその一歩が踏み出せない事。あの頃のように彼を引っ張り、受け止められる人がいないから、多少時間がかかる事。
その話を聞いて、彼等はニアにどう接するべきかを話し合った。お前なら大丈夫だと背中を押すか、自分達を言い訳として使わせるか、好きにしろと放っておくか。呼ばれる事のない、彼が寝ている時間を使って開かれた会議は、一つ結論を出して終了した。

(ま、それが出来れば苦労はしないんだろうけど)

溜め息を一つ、気づかれないようにそっと吐く。
話し合いの末に出た結論は、「何も言わない」だった。ニアの方から言い出すまで、こちらからはその話題に触れない。そこにあるようなないような、空気として扱う。ただし彼の方から話を切り出された時は、ちゃんと聞いて真正面から対応すること。逃げちゃダメだよ、なんてマー
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