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エターナルユースの妖精王
DAY BREAK
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笑みはまた消えて、遠くを走る馬車を見つめながら。

「アイツが立派な魔導士になるといいって、心から思ってる。だから見送ったし、ナツ達もいるから、何かあったとしても多分大丈夫だろうとは思う」

ぎゅっと己の身を抱いて、細く息を吐いて、続ける。

「…だけど、あの時だってそうだった。きっと変わるから、オレがここで何かするべきじゃないからって、オレはアイツの手を取らなかった。…そのせいで、オレのせいで、アイツは……」

それ以上言わせたくなくて、咄嗟に肩に手をやる。突然触れてきた手にニアはぴくりと体を震わせて、一度唇を噛んでから、思考を飛ばすように首を横に振った。
彼が何を言っているのか、何を言いたいのかは嫌というほど解ってしまう。だからこそ、その続きを言わせる訳にはいかなかった。じっと見つめると、それが伝わったのか彼は小さく頷く。

「……だから、つい動いてた。良かれと思って目を逸らして、そのせいで同じ事を繰り返すのは御免なんだよ。……アイツだけは、守らないといけないんだ」

約束したから、と小さく呟いて、前を見据える。
その約束を、パーシヴァル達は知っていた。知っていたから、彼に「余計な口出しは止めておけ」とも言えなかった。ただ「それでもやるのか」とだけ問う。少し頑固な面のあるニアが折れるはずもないのに、彼の口から彼の意志を肯定する言葉が聞きたくて、敢えて確認を声に乗せる。

《で?現在進行形で馬車追ってる訳だけど、具体的に何すんの?アンタのやりたい事になら、いくらだって協力するけどさ》
「とりあえず、あまり手は出さない。オレ達はあくまで部外者だからな。本当に危険な状況にならない限り動かない。……それでいいか?」
《ハイ了解。いちいち確認なんてしなくても、アンタの決定になら従うまでだ。…一応言っとくが、アンタが団長だからじゃない。俺がそうしたいから従ってるんだ、取り違えんなよ》
「解ってる」

念を押すと、ニアはいつものようにニヒルに笑う。ようやく浮かんだ見慣れた笑みに、少しだけほっとした。
変なところで甘くて、何でもないように振る舞っておきながら心配性で、少し考え始めると止まらない後ろ向き。更にそれを素直に口に出せる相手が数少ないと来た。年月が経とうが面倒くさい性格のままの団長に、パーシヴァルは口角を吊り上げてみせる。

《んじゃ行くか、()()()()
「…出来ればニアの方で呼んでほしいんだが……」
《他に誰もいないし、問題ないだろ?》

な、と首を傾げる。
ニアは少し考えるように目を伏せて、それから困ったように苦笑した。





これは余談ではあるが、同時刻の“誰ガ為ノ理想郷”内での事である。

《…何だあれ》
《おや、ランスロット。お出かけですか?》
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