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SNOW ROSE
廃墟の章
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 その夜のことである。皆が寝静まった真夜中に、その静寂を破る甲高い叫び声が響き渡った。
「皆さん、早く起きて下さい!火事ですっ!早く外へ…!」
 声の主はマリアであった。その声に四人は直ぐ様飛び起き、荷物を抱えて部屋を出た。廊下はもうもうたる煙りが漂い、まともに歩くことさえ儘ならぬ状況であったが、四人は何とか火を避けて外へ出ることが出来たのであった。
 後方を振り返ると、旧いながらも美しく手入れされた宿が、真っ赤な炎によって呑み込まれてゆくところであり、四人は呆然と佇むしかなかった。火の勢いは凄まじく、とても四人では対処しようも無かったのである。
 少しすると火事を知った街の人々が集まり、近くの小川よりバケツで水を汲み、それを炎へとかけ始めた。それでこの炎が収まるとは思えなかったが、四人もそれに加わって炎を食い止めようと必死に水を掛けたのであった。しかし、炎の勢いは衰えることを知らず、宿はとうとう炎の海へと埋没していったのであった。
「何故…こんなことに…!」
 炎に崩れ落ちる宿を見て、ミヒャエルは地面に膝をついて自責の念に駆られていた。それは何故か…?この後、直ぐに知ることになろう。
 だが、これ程の大火だと言うにも関わらず、街の人々とケリッヒ夫妻は仕方ないと言った風に、口々に話始めたのであった。
「建て直すにゃ、かなり時間が掛かりそうだなぁ…。」
「まぁ、もう古かったですからねぇ。土台位は使えるでしょう。」
「うちで新しい食器作って持ってくから、食器の心配はしなくていいよ!」
「それじゃ、うちは鉄物を作るさ!」
「そんじゃ、うちら大工は明日から材木を調達してくるさ。早く完成させねぇと、まともな昼飯にありつけねぇからな!」
 何とも図太い街であるが、これも助け合いの精神から来ていることは、旅人の四人にも理解出来た。
 この時代、火事は珍しいことではなかった。それ故、このフォルスタの街の法には“失いし者あれば、皆で新たなる物を与えよ”という風変わりな法があった。その法は古くから存在し、街の者はこの法を法としてではなく、心の中に受け継いできたのであった。
 しかしながら、ミヒャエルだけは違っていたのである。この火事は、ミヒャエルがここに居たからこそ起きたものであり、ミヒャエル自身が火種だと言えたからであった。
「ミヒャエルさん。何を落ち込んでらっしゃるかは知りませんが、形あるものいつかは滅びます。でも新しく建てれば…」
 マリアはミヒャエルが沈んでいる様子に心配し、そう声を掛けた。だが、ミヒャエルはそれを真っ向から否定した。
「違うんだ!この火事は私のせいなんだ…!」
 ミヒャエルの声は大きく、マリアだけでなく、側にいたレヴィン夫妻や街の人々も驚いて振り返ったのであった。
「何故ですの…?」
 強張った表情のミヒャ
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