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SNOW ROSE
間章V
たゆとう光
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八六年になってからのことである。
 アヴィはその間、ノベール家当主として港の管理やロッツェンの街役員、また海上警備隊の指揮などで手一杯働いていたはずである。恐らくその傍らでは、妻のマリーが白き薔薇の造花を造っていたに違いない。
 だが、伝えられている事柄全てが事実とは限らない。しかしながら、一つだけ知り得ることがあるであろう。

“彼らは幸福の内にあった”と言うことである。

 この短い物語は、堪え忍んで一つの愛を貫くことの尊さを説いたものであろう。
 このロッツェンの街は今でも残っており、この街の港にはアヴィと妻のマリーの像が立てられている。そして二人は今なお、たゆとう海の光を優しき笑みを浮かべ眺めているのである。



  「たゆとう光」
        完



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