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自然地理ドラゴン
一章 小さき魔物 - 海竜と共生する都市イストポート -
第7話 戯れる子供たち
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、目の前の穏やかな波打ち際に、ピョンと何かが跳ねた。

「わっ!」

 同じく前を見ていたティアが驚きの声を上げる。シドウもさすっていた手を離し警戒する。
 その跳ねた何かは、水中へは戻らず、砂浜へ上陸してきた。

「あれ? ウミヘビ……じゃないよね?」

 青みがかかった灰色の長い体。
 少し体を巻いているが、長さは片腕程度か。
 ティアの感想のとおり、外見は「ウミヘビではない“何か”」という感じかもしれない。

 よく見ると、骨入りでしっかりとしている胸ビレがついていることがわかる。
 頭部も胴体を考えると大きく、丸みを帯びていた。
 そしてこちらを見つめるその目は、明らかに海蛇などのものよりも大きく、クリクリのつぶらな瞳だった。

「あ、こっちに寄ってきた」

 ティアの言葉にはあまり緊張感がない。
 シドウから見ても、「逃げなければ」と思わせるような雰囲気が、その動物からはまったく感じられなかった。

 その動物は、少し寄ってきて首を立てると、小さく「ピヨ」と鳴いた。
 思わず二人で顔を見合わせる。

 そのまま見守っていると、体を器用にくねらせながら、さらにシドウの足元まで寄ってきた。
 シドウがしゃがんで胴を掴むと、その動物は首を回してその手をペロリと舐めた。

「鱗がまだ柔らかい。これはモンスターの子供だ」
「へー。すっごいかわいい! 何のモンスター?」

 ティアが横から手を伸ばして、その動物の頭をなでる。
 気に入ったのか、目を輝かせていた。馬車酔いも吹き飛んだようだ。

「たぶん、シーサーペントだと思うけど」
「ええっ! すごいデカくてヤバいやつじゃないの?」
「ヤバくはないよ。能力が高いから一応モンスターに区分されているだけで、おとなしい動物なんだ」

 シーサーペントは海に棲む巨大な海竜である。
 高い戦闘能力を持つとされる。

 だが基本的には、餌としている海棲生物以外に手を出してくることはない。
 人間と遭遇しても何もしてこないし、むしろシーサーペントがいればその付近は危険な海棲モンスターがいないことが多いので、より安全だと言える。
 海の世界では頂点に立つモンスターであるが、大魔王とも協力関係はなかったようである。

「へえー。でもなんでここに上がってきたのかな?」
「子供のシーサーペントは浜近くで遊ぶんだよ。近くに親もいるんじゃないかな」

 成体のシーサーペントは、普段そこまで沿岸の浅いところに来ることはない。
 しかし、子供を産んだときは、その子を特定の浜近くまでよく連れてくる。
 浜には捕食者がいない。安全を考えてのことだろう――シドウは師匠からそのように教わっていた。

「あ! ピヨピヨ」

 突然、後ろから少女
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