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フロンティアを駆け抜けて
幽玄なるチャンピオン
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シンボルハンターとの戦いを終え、ジャックと共に父親のところへ行こうとしたジェムはダンプカーが建物に突っ込んだような破壊音を聞く。音はかなり遠くからだったが、はっきりと聞こえた。

「きゃっ!?」
「すごい音だね。誰かがポケモンバトルでもしてるせいかな?」

 ここは最前線のバトル施設。その可能性は高そうだった。ジェムたちに関係あるとも限らないので、放置しても構わないだろう。

「何か嫌な予感がする……ジャックさん、行ってみてもいい?……お父様がこの音を聞いたら、駆け付けそうだし」
「それは大いにありそうだね。じゃあスイクン、頼むよ!」

 ジャックはモンスターボールからスイクンを出す。バトルピラミッドでジェムが戦ったポケモンだ。スイクンはジェムを一瞥すると、静かに頭を垂れた。

「うん、乗っていいよって」
「ありがとう、スイクン」

 ジェムはスイクンにお礼を言って、ジャックが乗った後自分もそっと背に乗ってみる。すごくひんやりしているのに、座っていても体が冷えない。スイクンが地面を蹴って走り出すと、なんだか自分が北風になったような気がした。ホウエンの夜風が、心地よく疲れた体を吹き抜けていく。

「気持ちいい……」
「あはは、でしょ? 乗り心地は抜群なんだけど、心が綺麗な人間しか乗せてくれないからジェムが乗れるのも今の内だけかもしれないね」
「……そうかも」

 ジャックの軽口を、ジェムは怒ったり笑ったりせずに受け止めた。今の自分は、大好きだった両親に疑問と怒りを抱えている。二人と話しをしてみて、その結果自分がどう思うのかはわからない。あれだけ大好きで尊敬していた父親を嫌いになってしまうのかもしれないと考えると、とてもこの先心が綺麗でいられるなんて思わなかった。

「ジェムももう13歳になったんだ。そろそろ反抗期を迎えていい時期だから遠慮なくあの笑顔お化けに文句を言っていいんだよ?」
「え、笑顔お化け……」

 ジャックがジェムの父親を冗談でも悪く言うなんて滅多にないことだ。でもジェムが父親を大好きだったから今までは目の前では言わなかっただけなのかも、なんて思ってしまう。

「それぐらいの勢いでってことさ。皆を笑顔にするチャンピオンなんて言っておいてお母様一人も笑顔に出来ないお父様は嘘つきだ!! ぐらい今の君には言う資格がある」
「……」

 ジェムは黙った。確かに自分が知ったことから考えれば、ジェムの父親は自分の妻であるルビーの苦しみを解消することは出来ず、それでもなおチャンピオンとしての責務、ひいては観客が笑顔になれるポケモンバトルを優先していたことになる。でも、本当にそうなのだろうか。

「ごめんごめん。励ますつもりが困らせちゃったね。とにかく、ジェ
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