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艦隊これくしょん【幻の特務艦】
第三十八話 ミッドウェー本島ヲ攻略セヨ(Final)
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尾張姉様!!」
深海棲艦を渾身の力でおしながら近江が叫ぶ。
『ま、待て!!!』

「これが、艦娘魂ってやつよ!!!目ェ見開いて、この心意気、しっかり受け取りなさい!!!」
尾張が渾身の叫びを相手に叩き付けた。
「零式弾装填完了!!」
「主砲斉射!!!」
『テェ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!』
二人の満身からの叫び声が、閃光と轟音、そして炎となって深海棲艦を渦を包み込んだ。見る見るうちに深海棲艦の渦、そして尾張、近江が閃光の奔流の中に消えていく。それは巨大な火球となっていった。

 紀伊は痛みに耐えながら、前方で起こった灼熱の閃光と火球を見つめていた。誰しもが凍り付いたようにいつまでもその光景を凝視していた。

一瞬、収縮した火球が拡散し、ついで――。

轟ッ!!!!

地鳴りのような音とともに、すさまじい大爆発がミッドウェー本島を、艦娘を、深海棲艦たちを襲った。すさまじい衝撃波が、台風並に吹き荒れ、紀伊たちはお互い身を寄せながら、懸命にそれに耐えるほかなかった。
「尾張姉様ァ!!!!近江姉様ァ!!!!」
爆風と衝撃波に負けじと、讃岐が渾身からの大声を出した。

だが―。

それも長くは続かなかった。あれほどの嵐が嘘のように静まり、あたりは穏やかな夕日の光が優しく照らし出し、いったん怯えるように引いた波は静かにミッドウェー本島に打ち寄せていった。

抱き合っていた艦娘たちは傷だらけのまま、呆然とお互い抱擁したまま、海上に佇んでいた。
その中にあって、紀伊は凍り付いたように動かなかった。
「・・・・・・・・・。」
自分の喉が鳴っている。そしてもう枯れたはずの眼から涙がとめどなく頬を伝っていた。

それが覚えている最後の感覚だった。

「バカ・・・・バカ姉様・・・・!!」
隣で紀伊を支えながら讃岐がしゃくりあげていたのが、遠く聞きつつ、紀伊は暗黒の中に落ちていった。

 

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