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異伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(ヴァレンシュタイン伝)
困ったチャン騒動記(3)
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……」
「よ、よく似合っていると思うぞ」

思わず声が上ずった、卑怯だぞ、お天気女。お天気女は俺の目の前でイジメテというかイジメナイデというか妙なオーラを醸し出している。まるでヤン・ウェンリーの用兵のようだ。後退しているのか、誘っているのか、進むべきなのか、止まるべきなのか、判断に悩むではないか。

「本当に良くお似合いです、奥様。この仕事を長くしておりますが、奥様ほど御美しい方の御召し物を用意させていただきましたのは当店にとっても大変嬉しい事です」
オーナーの言葉は嘘では有るまい。オーナーの顔には作り笑顔ではない、本当の笑顔が有る。

「そろそろ時間だ、行くとしようか」
「はい」

俺はお天気女に背を向けた。腕を絡め易くしたつもりだったが、少し間が有ってからエーリカは腕を絡め隣にきた。白くハリの有る胸元にネックレスが良く似合う。大粒のルビーにラウンド ブリリアント ダイヤモンドをプラチナにセットしたネックレスだ。

ついつい胸に視線が行きそうになって慌てて視線をそらした。ドレスの肩紐が視線に入る。肩紐には細かいダイヤがちりばめられている。パーティ会場のライトを浴びて煌くだろう。イヤリングのルビーも良く似合う。やはり濃紺のドレスには赤が良く映えるようだ。

店内を歩いていると彼方此方からざわめきが聞こえる。俺とエーリカの事を話しているようだ。エーリカは慣れていないのだろう、不安そうな表情をしている。
「大丈夫だ、もっと堂々としていろ」

エーリカが驚いたように俺を見てきた。髪をアップにしているせいだろうか、それとも何時もより念入りにメイクをしたせいか、普段の彼女とはまるで別人だ。驚いた表情が無防備なまでに俺に向けられる。白い首筋が、肩が驚くほど華奢に見えた。

「はい」
エーリカはそう言うと身体を俺に寄せてきた。エーリカの胸が腕に当たる。柔らかく、そして同程度の強さで押し返してくる。腕が熱い、何か別の何かにでもなったようだ。

胸元の豊かさは抱きしめたいと思わせるが、肩から首筋の華奢さは抱きしめたら折れてしまうのではないかと思ってしまう、一体どうしてくれよう……。

店を出て地上車でパーティ会場に向かうが視線が横に行きそうになるので困った。下を向けば脚に、上を向けば胸に視線が行く。別に自分の妻なのだから見ても構わん筈だ。そう思ったが、睨まれそうだし軽蔑されるのはご免なので我慢した。

ハイネセン・グランド・ホテル、パーティが行なわれるホテルだ。ハイネセンでも伝統と格式のあるホテルらしい。会場は十三階にある芙蓉の間で行なわれる。芙蓉の間は結構大きな会場だった。中央にはダンスが出来るようにスペースが確保してあり、曲を奏でるための演奏者達も揃っている。

既に先客が大勢いた。帝国軍人もかなりいる、イエーナー
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