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SNOW ROSE
乙女の章
Y-a.Air
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 天には数多の星々が掛かり、その一つ一つが語るかのように瞬いている。
 先日より三人の神父達は、森の外にある街の大聖堂へと赴いていた。その大聖堂で、乙女達にも音楽が奏せるようにと談判に行ったのである。
 森の教会で音楽を始めてから早二年もの年月が流れ、乙女達の腕もプロ宛らになっていた。
 しかし、こうして周囲は未来へと進み行く中で、街の大聖堂と市当局は頑ななまでに旧き教義を守っていた。尤も、三人の神父もそう易々と認められないとは誰も思っていたのではあるが…。
 そんな三人の神父が苦心して大司教らに言葉を紡いでいる頃、森の教会では礼拝堂で神へ音楽が捧げられていた。
 これは、三人の神父が無事に帰ってこれるようにとの願いも込められていたのであった。いつもは祈りだけであるが、それならばと音楽を奏でたのである。
 演奏を終えて暫くすると、ラノンが徐に口を開いた。
「私は間もなく、聖所へと籠らなくてはなりません…。しかし、音楽を絶やさないため、私は歌いましょう。楽器は無くとも、声という最良の楽器があるのですから。」
 その言葉を聞いた一同は皆淋しげに俯いたが、ラノンはその様な皆に微笑んで言葉を繋げた。
「私は神に捧げる新しき歌を作ります。来るべき時のため、そして未来のために…。」
 ラノンの微笑みに陰りは微塵もなく、ただ神に捧げられるものを見つけた喜びに溢れていたのであった。
 皆はラノンの微笑みを見て笑顔を取り戻し、今一度音楽を奏したのであった。
 だが、その心境は複雑であったに違いない。あと三月もすればラノンは聖所へと赴き、最期の月を迎える。そうなれば、最早シュカには会うことすら叶わなくなるのである。
 ラノンはこの日々をシュカと共に、まるで輝ける星のごとく飾っていた。そして、神がこの出会いを忘れぬ様、天に向かって祈り続けていたのであった。

- また、いつの日か出会えますように…。 -

 この年、大聖堂で乙女の音楽が響くことはなかった。それは神父達の言葉を司教達が撥ね除け、乙女を森の外へと出すことを拒絶したからであった。
 それどころか…危うく、この三人の神父は不敬罪に問われるところであったのだが、その場に居合わせたこの国の王に助けられたのである。
 この時代の王であるハンス・レオナルディ=リューヴェンは若くして王座に就いた王であり、この時は未だ二十一歳であった。
 しかし、多くの才の持ち主であり、民の間では“賢王ハンス”の名で敬われ、また広く親しまれてもいたのであった。
 この大聖堂へ何故に王が訪れていたかと言うと、この日が七年に一度の“星宿の儀式”の日であったからである。
 この儀式は預言者が星を読み解き、そこから王が国をどのように導けば善いかを伝えるというもので、今はその儀式のやり方は伝承されてはいない。

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