暁 〜小説投稿サイト〜
SNOW ROSE
乙女の章
V.Corrente
[1/4]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

「二人の様子はどうかのぅ?」
 ゲオルク神父がシスター・アルテに聞いた。
 ここは聖堂横に作られた、三人の神父のための執務室である。飾り気の無い室内ではあるが、温かい色彩と清潔感があり、訪れる者を安心させるような場所であった。
「二人は仲が良く、共に勤勉に励んでおります。まるで姉妹のように…」
 シスター・アルテはそこまで言って言葉を切った。目の前に座る老神父も、どことなく哀しげな表情を見せている。
「あれから四年…。あれで本当によかったんでしょうか?」
 横から話し掛けたのは、一番若いマッテゾン神父であった。若いとは言っても、もう四十近くであり、この教会に着任してからはまだ六年程である。
 その横には、ゲオルク神父の次に着任した古株であるヴェルナー神父が控えていた。
 無論、シスター・ミュライも顔を揃えている。
「あれは…とても悲しい出来事でした…。」
 シスター・ミュライが呟くように言うと、ヴェルナー神父は怒るような口振りでシスター達に言った。
「神のご意志なのだぞ?分かっておるのか、汝らは!?そもそも、その様になるべく選ばれし乙女なのだ。単に憐れだと思うのは間違いと言うもの!」
「落ち着くのだ、ヴェルナー神父。この悲しみは、我らに与えられし試練やも知れぬではないか。」
 大声におののいたシスター達のため、ゲオルク神父はヴェルナー神父をなだめた。
 ヴェルナー神父は、この老神父の言葉を無視することが出来ず、未だ何か言いたげではあったが、その口を閉ざしたのであった。
 その場の重苦しい空気を和らげようとしてか、マッテゾン神父が声を出した。
「しかし、仲が良く互いに勤勉であるとは…。なんとも良いことではまりませんか。神の教えにも叶ってますし、まだ暫くは様子を見ているだけで良いのでは?ラノンとて、あのことを話せばどうなるか知っているはず…。」
「それは…解っております。本人は何も申しませんが、シュカとの時間を大切にしていることで分かります。ラノンはリーゼよりも長い月日、自身との葛藤に耐えねばならないというのに…。」
 シスター・アルテはそう言い終えると、マッテゾン神父へと視線を移した。その視線にマッテゾン神父は居た堪れなくなり、シスター・アルテから目を逸らしたのであった。
「そう…ですね…。」
 マッテゾン神父はそう呟くように返答するのがやっとであったが、その言葉を継ぐかのように、再びヴェルナー神父が口を開いた。
「なにはともあれ、皆二人のことを案じているのだ。それを理解してほしい。私も口が過ぎたことを詫びよう…。今日は二人とも外か?」
「はい。神の天幕へ入り、乙女達は祈りを捧げております。」
 この教会の習わしで、乙女になった者は七日に一度、教会から少し離れた場所にある神の丘にて天幕を張り、その中で一日祈りを
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ