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父殺し
第二章
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「おられるとか、そして」
「ことの露見を恐れてか」
「兵を挙げようとしているとか」
「あの者は仲父上の食客だった」
 王はこのことを言った、仲父とは呂不韋のことだ。王は国の宰相である彼に敬意を表し父に等しいとしてこう呼んでいるのだ。
「それではだ」
「はい、宰相殿が推挙されましたので」
「秦の法では推挙された者の罪は推挙した者の罪」
「そうなります」
「そうだな、そしてだ」
 王はその者に背を向けたまま話題を変えてきた。
「この件は誰が知っているか」
「私以外にですか」
「そうだ、知っている者は誰か」
「私と同じ役にある者は全て」
 見れば男は密偵だった、王に仕える。
「知っております」
「そうか」
「左様です」
「わかった、後で褒美の銀を渡す」
 王はその者に背を向けたまま告げた。
「下がれ」
「わかりました」106
 その者は王に応え下がって宮殿から離れた後で胸を撫で下ろした、王が既に剣を抜いているのはわかていた。若し知っているのが自分だけだったならと思い命拾いしたことを喜んだのだ。
 王は話を聞いてすぐにだ、用意にかかった。そして??が反逆を起こすと。
「賊を征伐せよ」
「御意」
「それでは」
 既に手足の様になっていた臣下の者達に命じた、すると。
 ??は忽ちのうちに反乱を抑えられ一族郎党と共に捕らえられた。王はその彼に一切容赦することなく命じた。
「一族郎党秦の法に従いだ」
「死罪」
「そうしますか」
「そうだ、車裂きにせよ」
 両手両足をそれぞれ牛が索く車で引っ張り身体を引き裂いて殺す刑罰だ。
「全員な」
「それでは」
「その様に」
「それでなのですが」 
 臣の一人が王に問うた。
「宰相殿は」
「仲父上か」
「どうされますか」
「それは」
 眉一つ動かさず??の処刑を命じた王だったが。
 表情は変えていなかった、だが一瞬言葉を止めてからまずこう言った。
「その前にだ」
「と、いいますと」
「まず母上だが」
 ??と不義を犯した自身の母である王太后のことから話す。
「余の実母だ、だからだ」
「処刑は、ですか」
「流石に」
「それは忍びない」
 こう言うが流石に母殺しは民や他国であまりにも評判が悪く体裁も悪いと思ったのだ。王の真意は王のみが知っているが。
「蟄居とせよ」
「わかりました」
「しかし不義の子二人は死罪だ」
 王の父親違いの弟達になるが情は一切なかった。
「首を刎ねよ」
「そうします」
「その様に」
「そしてだ」
 ここまで話してだ、王はあらためて言った。
「仲父上だが」
「宰相殿は」
「どうされますか」
「連座が秦の法だが」
 推挙した者もというのだ、罪人を。
「しかしそれまでの功がある」
「だか
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