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泥棒
第三章
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「厄介な者達じゃ」
「あれが一国の使者ですか」
「信じられませぬな」
「幾ら武士ではないとはいえ」
「あれは」
「江戸に入るまでも入ってからもな」 
 新井はその武士でない彼等についてさらに言った。
「注意せねばな」
「ですな、しかし江戸でもです」
「各藩の者達が空き巣なぞ」
「旗本、御家人も同じです」
「夢にも思いませぬが」
「全くじゃ、あの様な者達ではな」
 どうかとだ、新井が言うには。
「さして見るべきものがないやもな」
「使者の中には学者も多いですが」
「それでもですな」
「民達から堂々と盗みを働く者達なぞ」
「有り得ませぬから」
「わしもそう思う、では引き続きな」
 新井はあらためて彼等に命じた。
「見張っておいてくれ」
「そうさせてもらいます」
「それでは」
「これよりも」
「あの者達が帰るまで」
 彼等も応えた、しかし。
 このことは彼等にとって非常に強い印象を与えた、新井は実は彼等への応対等の金をかなり減らしていたが。
 このことについてもだ、幕臣達に言った。
「実はあそこまでいらなかったことも事実じゃが」
「減らしてですな」
「よかったやも知れませぬな」
「最初から」
「そうしても」
「ああした者達ではな」
 難しい、そして苦い顔での言葉だった。
「江戸城にも大手門からでなく裏手門から入れてな」
「ですな、全く以て」
「その応対でも」
「それでよかったですな」
「琉球とは違って」
「そうであるな」
 彼等への金と裏手門に入れるという扱いにしてというのだ。
「よかった、琉球の者達はこうしたことは絶対にせぬからな」
「はい、穏やかです」
「礼儀正しく物腰も丁寧で」
「こちらも気持ちよく応対出来ます」
「実に」
「全くじゃ、そしてじゃが」
 新井は幕臣達にあらためて言った。
「空き巣の件じゃが」
「はい、どうするか」
「そのことですな」
「うむ、それじゃが」 
 新井はこの件についてどうするのかをだ、あらためて話した。そうして幕府はその様にした。
 朝鮮通信使の正しい呼び名は聘礼使といった、彼等には指差してはならぬ二階から見てはならぬと日本側もそれなりの礼儀を取っていた。 
 作者が中学生の時の道徳の教科書には彼等は尊敬されていて色紙は家宝になった等と書かれていた。しかし一方で日本の民衆から鶏を盗んだだの階段で小便をしただの無作法だの手癖が悪いだの色々と書かれてもいる、特に鶏泥棒の件は絵となって残ってすらいる。
 彼等の方も日本の大坂や京都、名古屋そして何よりも江戸の町並みを見てその繁栄ぶりに驚いていた。彼等の実像については様々な話が残っている。
 こうした話もあったのかも知れない、新井が幕臣達にどういった対応をすべきかそして聘礼使
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