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銀河英雄伝説〜美しい夢〜
第二話 託す者、託される者
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る……。

「父、オトフリート五世の治世下、帝国はすでに崩壊への道を歩み始めておった。貴族たちが強大化し、政治は私物化されつつあった。帝国は緩やかに腐り始めておったのだ」
皇帝は穏やかな表情で話し続ける。相変わらず視線はバラに向けたままだ。俺が居る事に本当に気付いているのだろうか。それにしても表情と話しの内容になんと落差のあることか。
「……」

「予にはそれが判った。いずれ帝国は分裂し内乱状態になり、銀河帝国は存在しなくなると」
「なぜそれを止めないのです?」
皇帝はバラから視線をはずし、あらぬ方向を見た。相変わらず俺は無視だ。
「判るのと止めるのは別であろう。予には止めるだけの力は無い……」
「……だから帝位がまわらぬように放蕩をしたと」
「うむ」
「……」
皇帝の横顔には無力感が漂っている。この男の悲劇だ、誰よりも未来が見えたのにそれを変える力がなかった。皇帝という座につきながら出来なかったのだ。苦痛だったろう。

「しかし、皮肉な事に帝位は予に回ってきた。それからは滅びるのを先へ伸ばすのが予の仕事になった。何の楽しみも無い、滅亡を見据えながら生きる一生……、苦痛であった。素面ではできぬ事だ」
「……」
皇帝の声に苦い響きがある。日々酒を飲んだのはそのせいか……。皇帝が俺に顔を向けた。疲れきった老人の顔が有る。

「見るがよい、今の帝国を。門閥貴族は肥大化し、互いに勢力を張り合い始めた。国務尚書は何とか食い止めようとしているが果たしてどうなるかの」
たしかにその通りだ、原作では暴発した。
「内乱になってもミュッケンベルガー元帥がおられます。帝国は安泰でしょう」
気休めでしかない、それでも俺は言わざるを得ない。

「そうはなるまいな、内乱が終わればエリザベートもサビーネもこの世には居るまい。さすれば、皇族と言えるのはエルウィン・ヨーゼフ一人だけじゃ。そしてあれの資質は聡明とは言いがたい。いずれ混乱の中で帝国は自滅するだろう。そちはそれでも帝国は安泰だと言うかの」
「……」

皇帝の答えは明快で声は自嘲を含んでいた。そこまで読んでいたか……。
皇帝程、帝国の未来を見詰め続けた男はいないのではないだろうか。その結果は常に悲惨な未来しか見えなかっただろう。皇帝の放蕩を俺には責める事は出来ない……。実際、酒を飲むのも女を抱くのも楽しみからでは有るまい。絶望から逃げるためだろう。

「そんな時、あの者にあった、ラインハルト・フォン・ミューゼル。誰もが予に媚び、少しでも私腹を肥やそうとする中、あれはまっすぐに予に、そして貴族達に憎悪を向けてきた、心地よかったぞ。あの憎悪と覇気、才能。あれならばこの帝国を再生、いや新たに創生させるかも知れぬ、そう思ったのだ」
「……」
皇帝の声に喜びがある。ゴールデンバウ
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