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蒼き夢の果てに
第7章 聖戦
第160話 崇拝される者
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 真っ直ぐに伸びた長大な回廊。等間隔に存在する明かり取り用に設けられた窓に映る外界は現在、夕暮れの赤から夜の蒼へと移り変わる狭間の時間帯。何もかもが蒼く染め上げられる景色は、真冬と言う季節に相応しい冷たい場所へとその相を移していた。
 無機質な――鏡の間から出て、王太子用の控え室へと続くこの回廊は、霊的な、魔術的な攻撃に対しての防御には優れているのだが、俺自らが関わった時間的に言うと流石に装飾にまでは手が回らず、他の重要な……部外者の目に触れやすい回廊と比べると少し見劣りのする装飾に抑えられた……一言で言って仕舞うと非常に殺風景な空間と成っている。
 もっとも、其処はソレ。中世ヨーロッパ風剣と魔法の世界の中のトップレベル、ガリア王家や多くの官吏が暮らす宮殿でもあるので、地球世界二十一世紀の学校や官公庁などで見慣れた実用一点張り、何の捻りも飾りもない空間と比べる事は出来なかったのだが。

 一応、俺個人の意見としては適度な……ある程度の金を掛けた事が理解出来る場所。しかし、ハルケギニアの貴族たちの感覚で言うのなら、明らかに手抜きだと感じる回廊。
 其処をゆっくりと進み行く三人。外界からの雑音はなく、吐く息は少し白くけぶる。
 ハルケギニア的な感覚で言うのなら妙に明るい空間。そう、照明に関しては最初に手を掛けたのだが、流石に全館冷暖房完備と言う訳に行かなかったこの宮殿。荘厳な、と表現される鏡の間から出た回廊には何処かから忍び込んで来たむき出しの、真冬に相応しい冷気が蟠っている。
 そのような真冬の高緯度地域に相応しい冷気に覆われる廊下の白い壁に背中を預け、人待ち顔でただ佇む少女が一人。

 身長は百四十センチ台前半。おそらくタバサよりも少し低い。長い……自らの腰の位置を越え、膝の後ろ近くまである長い黒髪。ハルケギニアでは何故か精霊王に人気の高い地球世界の西宮に存在するとある高校女子の冬の制服。
 この世界的に言うと彼女とかなり近い存在、土の精霊王妖精女王ティターニア(弓月桜)のような楚々とした佳人とは違う。更に言うと水の精霊王湖の乙女ヴィヴィアン(長門有希)の持つ妙に作り物めいた無機質の美でもない。栴檀(せんだん)は双葉より芳しい。そう言う類の、五年後、十年後を予想するとさぞかし艶やかな美人へとなるのだろう、と感じさせるタイプの美少女。瞳には――何故か俺を射抜かんばかりの強い光を浮かべている。
 ……と言うか、何故、何時も何時も、俺は彼女に睨まれなければならないのだ?

「何や、来て居たんかいな、崇拝される者ブリギッド」

 来ていたのなら、さっきのカブ頭との戦いの時に手伝ってくれたって良かったのに。
 少し恨みがましい口調で話し掛ける俺。もっとも、これはやや芝居掛かり過ぎの台詞かも知れない。
 何故なら――

「オマ
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