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冷えたワイン
第四章
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 その叔母を見てだ。甥はいささか引きながら問うた。
「ひょっとしてさ。朝まで飲んでたのかよ」
「三時までね」
「で、今七時だけれどさ」
「あまり寝てないのよね」
「三時まで一人で飲んでたのかよ」
「そう。ビールね」
 まさにそうだとだ。甥に答える。服はジーンズとポロシャツのままでそれもかなりくたびれている。
「飲んでたのよ」
「一体何の為に旅行に来てんだよ」
「飲む為よ」
 まさにそうだとだ。素っ気無く答える彼女だった。
「それがどうかしたの?」
「全く。けれど二日酔いとかはないよな」
「お酒強いから」 
 だからだ。大丈夫だというのだ。そうしてだ。
 朝食のバイキング、魚や卵焼き、味噌汁の和食のものを取りながらだ。そのうえでだ。
 麻里奈はこんなことをだ。席に着いたうえで言ったのだった。
「物足りないわね」
「まさかと思うけれどさ。朝もかよ」
「お酒ないかしら」
「朝から飲むってどれだけ人生リングアウトなんだよ」
「普段は夜しか飲まないわよ」
「いや、それでも駄目だよ」
 旅行中でもだ。そうだろうと返す甥だった。
「朝から酒は幾ら何でも」
「飲むしかないじゃない。湘南だと」
「ニースじゃないからなんだ」
「そうよ。けれどないわね」
「普通朝からビールなんてないからな」
「ニースじゃ普通よ。シャンパンでね」
「ここ日本の湘南だぜ。ニースじゃないからな」
 博之は麻里奈に呆れた顔で返す。流石の彼女も朝は飲まなかった。飲めなかったと言っていい。
 しかし砂浜に出るとだ。またしてもだった。
 パラソルの下で冷えたビールだ。またしてもフランクフルトやソーセージと一緒に飲む。
 その叔母にだ、また言う甥だった。
「今日もかよ」
「そうよ。今日もよ」
 飲むというのだった。
「そうするわよ」
「本当にこの旅行の間飲み倒すんだな」
「こうなったら飲んで飲んで飲みまくるから」
「本当に何の為に旅行に来たんだか」
「とことんまでよ。じゃああんたはあんたでね」 
 どうかというのだ。博之に対して。
「適当に泳いできなさい」
「姉ちゃんはずっとここにいるんだな」
「そうよ。飲んでるからね」
「ああ。それじゃあさ」
 こうしてだった。博之を適当に泳がせてだ。麻里奈は飲み続けるのだった。その彼女を見てだ。
 若い男が傍を通り掛る。しかしだった。
「折角そこそこなのにな」
「ああ、あんなに飲んでるとな」
「誘えないな」
「っていうかどれだけ飲んでるんだよあの人」
「ビール次から次に飲んでるけれどな」
「泳がないで飲んだくれてるって」
「海に何しに来てんだろうな」
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