暁 〜小説投稿サイト〜
非日常なスクールライフ〜ようこそ魔術部へ〜
第48話『深雪』
[1/6]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
身体に刻まれた、恐怖の感覚。それに苛まれ、絶望の感情に身体が席巻される。
様々な感覚が錯乱し、許容範囲を超えた脳は考えることを放棄した。


──これが、『死』か。


次第に周りの音が静まっていき、いよいよ独りになった気がした。でも、それを「寂しい」と感じる機能はとうに消えている。
眩しかったはずなのに、寒かったはずなのに、煩かったはずなのに、怖かったはずなのに、その感覚も遠い彼方へ消えていった。

まだ、思い残すことはたくさんある。
それなのに逆らえないのが、運命の強制力だ。


・・・そうだな。せめて最期に、無事だけでも確認したかったな。



ユヅキ────






目を開けた途端、五感が一気に呼び戻される。
今、外で寝ているのだろうか。固い感触を背中に感じつつも、視界に広がる曇天を仰ぐ。
次第に意識が覚醒していき、ふと右手の違和感に気づいた。


──仄かに温かい。


ちらりと右手の様子を窺うと、誰かが両手で握っている。


──誰だろう。


視点を上にずらし、両手の主を確認しようとする。

そしてその顔を見た瞬間、例えようのない安堵感を得た。


「ユヅキ…?」

「…ハルト! 起きたの?!」


銀髪を揺らし、必死の表情でこちらを見つめるユヅキ。その蒼色の瞳は涙で潤んでおり、晴登の目覚めを心底喜んでいるようだった。


「ハルト……良かった、ハルト…!」

「ちょっ!?」


涙腺が耐えきれなくなったのか、大粒の涙と共にユヅキが抱きついてくる。
慌てて外そうとするも、遠慮なしに強く抱きつかれているため、中々引き剥がせない。

……仕方ない。照れくさいが、こちらとしてもユヅキの無事は喜ばしい訳だし、甘んじて抱きつかれることにしよう。


しかし、その様子を穏やかに見つめる人物が・・・


「いやぁ良かったねぇー」

「うぉっ!!……って、何であなたが?!」

「“あなた”じゃなくて“ミライ”だよ。いやぁ、たまたまユヅキと会ったものだから、行動を共にしていたんだよ。それにしても……ふふ、眼福眼福」

「あ、これは違うんです!!」


ミライが言っている意味がわかり、またユヅキを外そうとする。が、ユヅキはミライの発言すら聞いていなかったのか、泣き声を上げながら晴登から一切離れようとしないので、結局は不可能だった。


「う……」

「いいじゃないか、そんなに嫌がらなくたって。彼女だって必死だったんだよ。大体男なんだから、それくらい嬉しいものだろ? 羨ましいくらいだ」

「いや、普通に恥ずかしいですけど……」


晴登は俯き、頬を掻きながら答える。
それを見て、ミライは再び
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ