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提督はBarにいる・外伝
大泥棒が鎮守府にやって来る〜視察編・その2〜
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 軽口を叩きあっていたルパンと俺。その会話の流れの中で、いきなり雰囲気が変わる。

「じゃ、よっぽど大本営上層部か深海棲艦がバカやらない限り、未来永劫この戦争が終わらない、ってのもわかってるよな?……いや、大半の大本営の人間の望みは『現状維持』だって言うべきか?」

 鋭い、射抜くような眼光。まるでこちらの腹の中を探るような視線で、此方に問いを投げ掛けてきた。

『こいつ……試してきてやがる』

 海軍も一枚岩ではない。親艦娘派と艦娘否定派の2大派閥がバチバチと火花を散らしている。俺がどちらの派閥なのか……恐らくはそういった所か。

「まぁ、戦争ってのは形はどうあれ巨大消費だ。そこら辺の利益を貪ってる連中はこの戦争を終わらせる気はねぇんだろうさ」

 しかし敢えて、ここは本音を話すべき場面だろう。

「提督、それは……!」

 反逆、または利敵行為では?と言いかけた大淀の言葉を俺は左手で制した。

「ほぅ?それで?」

「戦争を起こすにも続けるにも、莫大な金が掛かる。兵器を作る為の資源を買い付ける予算、戦線を支える為の兵站、それらを輸送するコスト、新兵器の研究・開発費……数えていけば儲かる種はキリがねぇ。当然、それを提供する企業と消費する側の軍部は利権やら賄賂やらでズブズブ。両者丸儲け、ってワケだ」

 これは俺の妄想でも何でもなく、歴史的事実だ。戦時中に大儲けをした、という歴史的に巨大な企業は世界中に幾らでもあるし、事実日本だって太平洋戦争の焼け野原から20年でオリンピックが出来る程の復興・発展を遂げたのは朝鮮戦争が始まって戦争特需によってアメリカからの金の流入があったからこそだ。今のこの状況はまさに、戦時中の状況。徹底抗戦を唱える奴等は放っておけば延々と甘い汁を湧き出させる井戸を手放したくないのだ。




「成る程。……で、アンタはどうなんだ?」

 今度は口を開いたのは次元だ。お前もその甘い汁を啜っている側の人間じゃないのか?そう言いたげな雰囲気を漂わせて。

 鎮守府の提督、というのはある種の特権階級だ。妖精さんに選ばれた素養のある人間のみが、艦娘の指揮を執れるし装備の開発や建造もその素養がある人間にしか出来ない。幾ら俺が元帥のジィさんの推薦を受けて候補生になろうが、適性検査で弾かれていればそこで終わりだったのだが、何の因果か俺には素養があった。そして深海棲艦に対抗できるのは艦娘のみなのだ。この唯一無二、というのは大きな利益を生む。言ってみれば特許のような物だからな。

「俺も人間だからな、ある程度の報酬は貰わねぇと生活にならねぇ。そういう点では、俺もある意味同類さ。……まぁ、こんな下らねぇ戦争続けたいとも思わねぇがな」

 歴史的事実として、巨大な戦争の後は厭戦気運が高まって、
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