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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百四十話 謀反に非ず その生き様を見よ
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ーデターに関与しているそうだが?」
トリューニヒトの言葉に議長室の空気が重くなった。ボロディン本部長が静かに右手をブラスターにかけるのが見えた。恐らくは認めないだろう、あるいは抵抗するかもしれない。

「ようやく気付かれましたか……。心配していました、このまま気付かなければどうしようかと」
ネグロポンティは抵抗するでもなく否定するでもなくただ苦笑していた。

どういうことだ、ネグロポンティはクーデターに関与していることを肯定している。しかしそこには微塵も後ろめたさはない。それに心配していました? 思わずホアン、ボロディンを見た。彼らも困惑した表情をしている。

「どういうことだね、ネグロポンティ君。君は本当はクーデターには関与などしていないのではないかね。本当のことを話してくれ、君と私の仲じゃないか」
何処か縋る様なトリューニヒトの口調だった。しかしネグロポンティが首を横に振った。

「いいえ、私は主戦派とともにクーデターを計画しました。その事は事実です」
トリューニヒトの顔が苦痛に歪んだ。
「何故だ? 何故なんだ? ネグロポンティ」

「貴方のためです、トリューニヒト議長」
「私のため? どういうことだね、それは」
「この国にしぶとく蔓延る主戦派を一掃するためです」
「!」

思わずネグロポンティの顔を見た。穏やかな表情だ、何処にも気負いも野心も見えない。その表情のままネグロポンティが言葉を続けた。

「貴方にもそれはお分かりでしょう。それなしではフェザーンの返還、帝国との和平など不可能だという事が」
「……ネグロポンティ」

「以前から考えていました。同盟が帝国との協調路線を歩めるかどうか……。もちろん帝国がそれを受け入れるかどうかという問題が有りますが、それ以前に国内が纏まらなければ帝国に対し提案そのものが出来ません」

「そしてそのために常に障害となるのが主戦派です。その事は貴方が議長になってからの苦労を見ればわかる。常に主戦派に配慮して行動せざるを得なかった。そのために必要以上に国内調整に時間がかかっている」

ホアンが頷くのが見えた。その通りだ、同盟政府は常に主戦派に対して配慮して行動せざるを得ない。その分だけ行動が制約されるし時間がかかるのだ、つまり帝国が自在に手を打ってくるのに対しどうしても後手になりがちだ。その事に誰よりも苛立っているのはトリューニヒトだろう。

「つまり君はクーデター計画を探るために主戦派に近づいたというわけかね?」
トリューニヒトの言葉にネグロポンティは苦笑を漏らした。

「そうでは有りません。クーデターを計画したのは私なのです」
「ネグロポンティ君……」
「そう、私がクーデター計画の主犯です」

そう言うと今度は可笑しそうにネグロポンティが笑っ
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