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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百三十九話 揺れる同盟
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か……。

「同盟が当初フェザーン方面に三個艦隊を動員したとき、彼らはいずれもフェザーンへの侵攻を主張しました。あの時、派遣軍にはオリベイラ弁務官も同乗していました。あの時からフェザーンを占領すべきだと彼らが考えていたとしても不思議ではないでしょう」
「……」

グリーンヒル参謀長の話が終わっても誰も後を続けようとはしなかった。皆黙って考え込んでいる。ややあってボロディン本部長が躊躇いがちに話を始めた。
「アル・サレム、ルフェーブル、ルグランジュ、彼らは帝国領侵攻作戦に加わっていません。本来なら敗北した我々は閑職に追われ、彼らが軍の中枢に座ってもおかしくは無かった」
「……」

「しかし現実には我々が軍の中枢に居ます。そして帝国との間で和平をと考えている。彼らにとって我々は敗北者であり裏切り者なのかもしれません。だとすれば許せる存在ではないでしょう」

本部長が力なく首を振った。ビュコック司令長官は目を閉じ、ウランフ副司令長官は沈痛な表情をしている。自分達が軍の中枢に居る事が間違っているとは思わない、主戦派などが中枢に居るよりよっぽどましだ。しかし周囲から受け入れられない存在だと思われている事を認識させられるのは決して楽しい事ではない。

「それは私も同じだ。主戦論を煽っておきながら今になって帝国との和平、協調路線を歩んでいる。彼らにとっては受け入れられる存在ではない……。クーデターか、確かに有り得ない話ではないな……」
ボロディン本部長の言葉にトリューニヒト議長が自嘲を含んだ声で答えた。

「ハイネセンは手当てが出来ている、問題はフェザーンか……。どうすれば彼らを、オリベイラやアル・サレムを抑える事が出来るかね?」
ホアン委員長の問いかけに沈黙が落ちた。皆が視線を交わす。ややあってグリーンヒル総参謀長がホアン委員長に答えた。

「……一番良いのは第九艦隊の人間に抑えさせる事ですが、果たして誰が味方か分かりません。第九艦隊の人間を使うのは危険でしょう……」
「手が無いと言う事か……」
ホアン委員長が暗い表情で呟くように吐いた。

「ペイワードを使う事は出来ませんか?」
私が提案すると皆が私に視線を向けた。
「彼は帝国と同盟の和平、そしてフェザーンの独立を望んでいます。彼にとってクーデターの成功は悪夢以外の何物でもないはずです。必ず協力してくると思うのですが……」

「確かに協力はしてくれるかもしれん、しかしそれではペイワードに借りを作る事になるな。その分だけ彼の政治的な地位も上がる……」
レベロ委員長が顔を顰めた。確かにそれは有るだろうが他に手は無い、割り切るべきだ。そう言おうとしたときだった、トリューニヒト議長が口を開いた。

「構わんさ、レベロ。ペイワードの政治的な地位が上がればボルテックも和平
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